<社説>イチロー選手引退 ありがとうと言いたい


社会
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 米大リーグで次々と金字塔を打ち立てたイチロー外野手が引退を表明した。どんなに偉大な選手でもいつかは現役生活にピリオドを打つ日が来る。これまで、多くのファンを沸かせ、驚かせ、喜ばせ、そして、勇気を与えてくれたことに対し、心から「ありがとう」と言いたい。

 イチロー選手の功績は改めて一つ一つ挙げるまでもあるまい。1992年にドラフト4位でプロ野球オリックスに入団した。仰木彬監督に認められ、3年目でレギュラーに抜てきされると、めきめきと力を発揮する。
 94年から7年連続で首位打者を獲得した。この間、5度も最多安打を記録し、打点王、盗塁王にも輝いている。
 2001年に大リーグのマリナーズに移籍するや、たちまち首位打者となった。盗塁王も獲得する。04年には262安打を放ち、シーズン最多安打記録を樹立した。
 安打数は日本のプロ野球での1278、大リーグでの3089を合わせ、日米通算4367安打に達する。驚異的な記録だ。
 06年、09年のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)連覇では日本チームを牽引(けんいん)した。韓国を相手に決勝打を放ったことは印象深い。
 桁違いなのは打撃だけではない。外野手としての守備力も天下一品だ。プロ野球では7年連続でゴールデングラブ賞、大リーグでは10年連続でゴールドグラブ賞を受賞している。
 マリナーズの本拠地セーフコ・フィールドの右翼は、背番号51にちなんで「エリア51」の別称があった。走者を仕留める矢のような送球は「レーザービーム」と呼ばれている。走攻守の全てにおいて、超一流だ。
 打てるときも打てないときもたゆまぬ努力を重ねてきたことが、不世出の天才の名を確固たるものにした。その自己管理の厳しさは誰にもまねができないと言われる。
 技術向上のために全てをささげるストイックな姿勢を45歳になる今日まで貫いたのはイチロー選手のイチロー選手たるゆえんだろう。
 プロ28年目となり、キャンプでの不振から、ついに引退を決意した。「後悔などあろうはずがありません。自分なりに頑張ってきたということははっきりと言えるので…」。記者会見で語った。偉業を成し遂げた人にしか発することのできない言葉だ。
 今後は日本に戻って後進の育成に当たってほしいものだが、「監督は絶対無理。これは絶対が付きます」と述べていた。監督は駄目でも、アマチュアなら指導する可能性に言及したことは興味深い。
 日本人初の米国野球殿堂入りは確実で、国民栄誉賞の授与も検討されている。
 これから、どのような道を歩むにしても、野球を愛することだけは変わらないはずだ。新たなフィールドで活躍することを期待したい。