<社説>県内失業率最低更新 仕事の質に目を向けたい


社会
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 県内2月の完全失業率(原数値)が2・1%で、3カ月連続で過去最低を更新し、全国(季節調整値)の2・3%も下回った。原数値と季節調整値を単純比較できないが、沖縄が全国の数値を下回るのは1972年の日本復帰直後を除いて初めてだ。

 沖縄県は全国平均の約2倍で推移してきた高い失業率が長年の課題となってきた。このため多くの県民は今回の結果を驚きをもって受け止めたのではないか。
 要因として考えられるのは、県が取り組んできた雇用吸収力の高い企業誘致や、近年の観光客の急増を背景にした県外企業の進出による求人拡大などが挙げられる。
 手放しで喜ぶことができない側面も横たわる。県内の正社員有効求人倍率は0・55倍で全国平均1・18倍の半分以下にとどまっている。新規求人数に占める正社員の割合は27・3%で、全国平均の42・4%を大きく下回っている。失業はしていないが、非正規就労など待遇が十分でない労働環境に置かれている人が多いことを示している。
 若年者の離職率の高さも見過ごせない。昨年末に発表された2015年3月卒業の県内新規学卒者の3年以内の離職率は高卒で52・3%、大卒で39・5%で、全国平均(高卒39・3%、大卒31・8%)を上回っている。
 離職理由で多かったのが「仕事が自分に合わない」で、「休日と休暇の条件が合わない」が続く。新卒者と雇用者のミスマッチがあることは分かるが、不十分な労働条件が離職につながっていないか注視する必要がある。
 昨年9月に発表された15年度の1人当たり県民所得で、沖縄県は216万6千円と全国平均319万円を大きく下回り、全国最下位だった。15年度の所得と今回の失業率を単純比較できないが、正社員の割合が全国平均を大きく下回っている状況からすれば、所得が大幅に増加しているとは考えにくい。
 県が15年度に取り組んだ子どもの貧困実態調査で、子どもの貧困率が29・9%に上った。深く結びついているのが全国最下位が続く県民所得だ。このため県は本年度の貧困対策推進会議で、貧困の連鎖を解消するために、雇用の質の改善に向けた取り組みを貧困対策計画に盛り込んだ。
 雇用の質改善で重要だと言われているのが生産性向上による賃金上昇だ。14年度の労働者1人当たりが働いて生み出す物やサービスの価値「労働生産性」が沖縄県は全国平均の約7割だ。所得増加に直結する生産性向上に取り組む必要がある。
 日本銀行那覇支店が発表した1月の県内金融経済概況で、県内景気は66カ月連続で「全体として拡大している」と判断された。働く人々が好景気の恩恵を受けられるためにも、今後は失業率の抑制とともに、雇用環境の質向上などに目を向ける必要がある。