<社説>熊本地震3年 被災者に最大限の配慮を


社会
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 史上初めて震度7を2度観測した熊本地震から3年がたつ。依然1万6千人以上が仮設住宅などで仮住まいを強いられている。

 熊本県では2016年4月14日夜に発生した「前震」と同16日未明の「本震」で計50人が建物の下敷きになるなどして亡くなった。避難生活などに伴う「震災関連死」は熊本県215人、大分県3人で、犠牲者は16年6月の豪雨災害で亡くなった5人と合わせ273人に上る。
 熊本、大分両県で20万棟以上の住宅が損壊し、避難者は一時19万人を超えた。仮住まいで生活する人は3月末時点でまだ1万6519人いる。住まい再建の取り組みが何よりも急がれている。
 仮住まいの約7割は、民間賃貸住宅の家賃を行政が支払う「みなし仮設」だ。みなし仮設は東日本大震災で本格導入され、建設型より早く入居できる利点がある。入居期限は原則2年だが、一定条件を満たせば最大4年まで住める。
 区画整理などでやむを得ない場合を除き、熊本県は20年3月までに仮設住宅を解消させたい考えだが、柔軟な対応も必要ではないか。
 熊本県は自宅再建のためのローンの利子助成や、民間住宅を借りる場合に保証人がいなくても入居できるようにするなどの支援策を用意し、仮設入居期限を迎える人たちに制度の活用を促している。だが新型ローンの利用は見込みの5分の1にとどまる。
 新型ローンは、被災者も使いやすいように再建した住宅や土地を担保に融資できるようにした。だが「死後は必ず売却しなければならない」といった誤解もあり利用が進まないという。仮設住宅退去後への不安を取り除くことがまずは肝要だろう。
 資産が乏しく借り入れに踏み出せなかったり、希望に見合う物件がなかなか見つからなかったりと、被災者はさまざまな事情を抱えている。住まいの再建に向けて県も専門相談員を派遣するなど対応を急いでいる。地震で人生が一変した被災者の生活再建へ最大限の配慮が望まれる。
 仮設住宅で誰にもみとられず死亡したとみられる「孤独死」は28人に上る。阪神大震災や東日本大震災でも多発した孤独死を今回も防げていないという現実を直視し、入居者同士の見守りや支援の在り方について問い直さなければならないだろう。
 熊本では阿蘇大橋など被災したインフラの復旧工事が進む一方、鉄道や国道の一部は寸断されたままだ。シンボルの熊本城は大天守の外観復旧がほぼ完了したが、域内全域の復旧は37年ごろまでかかる見通し。都市部と山間部で復旧復興の進行に差があるとの指摘もあり、被災地全体への目配りも欠かせない。
 被災経験を踏まえ、災害に強いまちづくりと想定外への備えに各地で万全を期したい。沖縄もその教訓に学び議論を深めなければならない。