<社説>知事の政策実現会議 県民一体の体制が必要だ


社会
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 国際社会が目指す目標を共有する新たな試みだ。その取り組みを評価したい。

 玉城デニー知事は、県が掲げる振興計画「沖縄21世紀ビジョン」の実現に向けて「万国津梁会議」を設置し、6月上旬にも初会合を開くことを表明した。最終的に五つの分野の会議を設置し、基地問題、持続可能な開発を意味する「SDGs」(エスディージーズ)、虐待防止の3分野を先行させる方針だ。
 中でも「SDGs」は、知事が公約に掲げる「誰一人取り残さない社会」の実現に向けた新しい政策で、知事の肝いりといえる。県だけの取り組みにとどめず、ぜひ広く県民の意識を喚起してほしい。
 SDGsは2015年に193カ国が加盟する国連サミットで採択された国際社会共通の目標で、貧困や飢餓の廃絶、地球環境の保全、質の高い教育など17項目からなる。具体目標は169に及び、30年までの達成を目指す。
 この取り組みは、06年に当時のコフィ・アナン国連事務総長が金融業界に向け、投資の際は環境や社会などへの責任を果たすよう提言したことがきっかけで始まった。それまで国連では極度の貧困と飢餓の撲滅や初等教育の完全普及など八つの目標を掲げていた。これに発展途上国から、途上国の抱える課題解決策を先進国が決めているとの反発があり、先進国と途上国が「誰一人取り残さない」ことを目指し、一丸となって達成すべき目標が新たに提言された。
 昨年7月に民間団体などが発表した目標達成ランキングによると、日本は156カ国中15位だった。「ジェンダー平等の実現」や「海の豊かさを守る」「気候変動への具体策」など17の目標の中で5項目が4段階の評価で最も低い達成度だった。
 政府は昨年6月、積極的にSDGsに取り組んでいる国内29の自治体を「SDGs未来都市」として選定し、優れた取り組みには補助金制度も設けている。7月には米ニューヨークの国連本部で開かれたSDGsに関する政治フォーラムで、民間企業や市民団体などにSDGsを普及させ「オール・ジャパン」で取り組むことを表明した。
 県は今後、SDGsの沖縄版の策定に取り組む。万国津梁会議の部会で有識者らが目標について議論し、絞り込む。沖縄は子どもの貧困や低所得など全国の中でも突出した深刻な課題を抱える。沖縄特有の問題に切り込むには、徹底して実態を把握し、それに即した抜本策が肝要だ。県の手腕が問われる。
 国際社会が掲げる17の目標の中には「パートナーシップで目標を達成しよう」という項目がある。沖縄の課題を解決するためには、官公庁だけでなく、民間や市民団体なども協力し合う県民一体の体制が不可欠だ。それにはまず、県民一人一人が解決に取り組む当事者であることを自覚する必要がある。