<社説>高齢ドライバー事故 家族が気を配ってほしい

 東京・池袋で87歳の男性が運転する乗用車が暴走し母子2人が死亡した事故は、アクセルとブレーキの踏み間違いが原因である可能性が強まった。乗用車の機能検査で異常がないと判定されたのだ。

 ペダルの踏み間違いは誰でも起こす恐れがあるが、75歳以上に多いという。家族に高齢のドライバーがいれば、認知機能に衰えが見られないか、運転が難しくなるほど運動機能が低下していないか、常に体調に気を配る必要がある。自分では気付かない場合があるからだ。少しでも異常があれば、運転をやめるように促した方がいい。
 池袋の暴走事故は4月19日に発生した。猛スピードで通行人を次々とはね、2人が死亡、10人が重軽傷を負った。ブレーキ痕はなかった。
 亡くなった母親は沖縄県出身だった。被害者や遺族の無念を思うといたたまれない気持ちになる。夫は「少しでも不安がある人は運転しないという選択肢を考え、周囲も働き掛け、家族内で考えてほしい」と訴えた。重く受け止めなければならない。
 75歳以上のドライバーの認知機能検査は2017年から強化されている。運転免許更新時に「認知症の恐れがある」と判定された人には医師の診察を義務化し、認知症と診断されれば免許が取り消されたり、停止されたりする。
 だが事故は減る兆しが見られない。75歳以上のドライバーが過失の最も重い「第1当事者」となった交通死亡事故は18年に460件起きた。前年より42件増えている。
 この中で事故の前に認知機能検査を受けていたのは414人。半数は認知症か認知機能低下の恐れがあると判定されていた。認知機能と死亡事故に因果関係があることが分かる。免許更新時に問題がなくても、その後に認知機能が低下することもある。
 だからといって一定年齢に達した人の運転免許を一律に失効させるわけにはいかない。十分に判断力があり、安全に車を運転できる人から権利を奪ってしまうからだ。
 都市部に比べ、地方では公共交通機関が脆弱(ぜいじゃく)だ。車なしでは生活が立ち行かない人が少なくない。
 警察庁は免許の自主返納以外の選択肢として、運転できる地域などに制限を設ける「限定免許」の導入を検討している。具体化を急ぐべきだ。高齢者が免許を更新する際に運転技能を確認する実車試験も必要になるだろう。
 衝突を回避する「自動ブレーキ」の新車搭載が来年から義務付けられる方向にある。高齢ドライバーにとどまらず事故防止の効果が期待できる。後付けで搭載可能な装置ができれば新車以外でも取り付けを促進した方がいい。
 自らハンドルを握らなくても済むように、高齢者の移動手段を確保する助成制度を充実・強化すべきだ。悲惨な事故を防ぐため、あらゆる可能性を模索したい。