<社説>「幼保無償化」成立 制度設計の議論不十分だ

 改正子ども・子育て支援法が与党などの賛成多数により参院本会議で可決、成立した。3~5歳児の認可保育施設などの利用料を原則無償化することを柱とする。消費税率10%への引き上げに合わせ10月から無償化が始まる。

 幼保無償化は安倍政権が2017年の衆院選で目玉に掲げていた。政権浮揚のためのばらまき政策という側面は否めない。
 無償化に要する費用は年間約7700億円に及ぶ。消費税率の引き上げで得られる税収増加分が財源だ。
 安倍政権はもともと、消費税の増収分を国の借金返済に充てると説明していたが、方針を転換した。消費税率の引き上げに対する反発を和らげる狙いも透けて見える。
 保育を巡る現状に目を向けると、希望しても認可保育所などに入れない待機児童が昨年4月時点で約2万人いた。保育の受け皿が不足しているのである。その解消こそ急がなければならない。
 背景にあるのは深刻な保育士不足だ。資格を持っていても保育園などで勤務していない「潜在保育士」は数十万人に上るという。
 保育士1人当たりの負担が重すぎることが背景にある。責任が重く、心身をすり減らす激務でありながら、それに見合うだけの賃金も支払われていない。実際、保育士の平均年収は全産業平均を大きく下回っているのが実情だ。
 膨大な国費を投入するのなら、まずは保育士の待遇改善のために充てるべきだ。具体的には保育所の人件費に特化した助成であり、配置基準の見直しである。保育士1人が担当する子どもの数を制度的に減らし、配置を手厚くすることだ。
 思い切った財政支援によって、保育施設全体の底上げを図り、保育の質を高める必要があるのではないか。
 大人の都合ではなく、子どもの立場になって最善の策を考えなければならない。
 今回の幼保無償化は子どもの安全を確保するという点で不安がある。保育士の配置人数など、国が定める指導監督基準を満たさない認可外の施設も、経過措置として利用料補助の対象になるからだ。
 13~17年に認可外で起きた死亡事故は認可施設の3倍近い。本来は淘汰されるべき劣悪な保育施設にまでお墨付きを与えることになりかねない。「質の低下に拍車がかかる」と野党が批判したのは当然だ。
 現行の制度では、保育所の利用料は所得に比例して高くなる。このため、一律無償化による経済的恩恵は高所得層ほど大きい。費用の大半は、高所得層が支払ってきた利用料の穴埋めに充てられる格好だ。格差の拡大を助長する恐れがある。
 子育て世帯を支援する意義は大きい。とはいえ、今回の法改正は制度設計の議論が不十分であり、拙速と断じざるを得ない。