<社説>裁判員制度10年 経験伝える仕組み必要だ

 裁判員制度が始まって10年が経過した。最高裁が公表した総括報告書によると、裁判員候補者に選ばれたものの、辞退した人は全国で増加傾向にあり、昨年末までの全期間で62・5%に達した。市民に「身近な司法」とは裏腹に、刑事裁判への関心は低い。制度の問題点を洗い出し、不断の改革が求められる。

 事前に辞退が認められなかった候補者が選任手続きのため裁判所へ出向く出席率も低下傾向にある。那覇地裁でも顕著で、全国値を大きく下回っている。2016~18年の直近3年間を見ても5割に満たない。
 那覇地裁を含む全国60地裁・支部合計の出席率は、裁判員法の施行以降、70~80%台で推移してきた。15年以降は60%台に落ち込んでいるものの、那覇地裁の場合は法施行2~4年目にして60%台。5~7年目は50%台、8年目からは40%台と、全国と乖(かい)離(り)した右肩下がりの傾向が続く。
 出席期日の呼び出し状が到着せず、出席が期待できない人もいる。一方で刑事訴訟法の識者からは「刑事裁判への理解不足がある」との指摘もある。そのため書類が届いても開封すらされず、放置される事例があるという。
 加えて人を裁く責任の重大性に「負担を感じた」とする経験者も多く、それが先入観となり、裁判員に重い負担を感じる人もいる。
 沖縄では米国統治下の1963年に陪審裁判の導入が決定された。日本へ復帰するまでの72年5月まで民事、刑事合わせて10件程度が実施されたとみられている。
 市民の司法参加という点で裁判員と類似するが、同種の制度が実際に運用された県内ですら、低率で推移しているのは経験がうまく継承されていないからではないか。
 共同通信が全国の裁判員経験者(補充を含む)に実施したアンケートによると、裁判員を経験して良かったかとの問いに「非常に」が87%、「ある程度」が11%とほぼ全員が肯定的評価をしている。
 裁判員を務める前後での、こうした落差を解消するためには、立法、行政に限らず、司法においても主権者意識の醸成が欠かせない。選挙権と同様、裁判も市民一人一人の主体的権利であるとの認識の共有を促す必要があろう。
 そのためにも裁判員の経験を広く社会に伝えることで落差を埋める仕組みが重要になる。裁判員には評議の経過などについて守秘義務があり、経験が伝えられないのが実情だ。制度への理解を広げるために、対象事件が個別具体的に特定されない範囲で守秘義務にも一定の緩和を講じる必要もある。
 「身近な司法」実現のために始まった裁判員制度も道半ばである。学校はもちろん、社会全体で制度の理解を促進し、何よりも、人を裁くという重い負担を軽減させるなど、参加しやすい環境づくりが求められる。