<社説>ゲーム依存症 実態把握と予防が必要だ


社会
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 オンラインゲームやテレビゲームに夢中になり、やめたくてもつい続けてしまうという経験をした人もいるだろう。最近はコンピューターを使った対戦ゲームなどがeスポーツと称され、今年の茨城国体の文化プログラムとして採用されるなど市民権を得つつある。

 しかし、ゲームに没頭し、日常生活がままならなくなる事例が世界中で報告されている。世界保健機関(WHO)はオンラインゲームのやり過ぎで日常生活が困難になる「ゲーム障害」を新たな依存症として正式に認定した。
 日本では中高校生の7人に1人が病的なネット依存と疑われている。しかしゲーム障害の実態調査は十分に進んでいない。「依存症は病気」という認識で予防と対策を急ぎたい。
 ゲーム障害は、国内ではゲーム依存と呼ばれることが多い。WHOはゲームをしたい衝動が抑えられなくなり、日常生活よりゲームを優先し、健康を損なうなど問題が起きても続けてしまう特徴があると定義した。
 こうした症状が少なくとも12カ月続き、家族や社会、学業、仕事に重大な支障を来している場合に、疾病と診断できる。
 ゲーム依存の人の脳は、理性をつかさどる前頭前野の働きが大きく低下するなど、薬物依存などほかの依存症と似た状態になるという。ゲームをやめられないのは本人の意志が弱いからではなく、治療が必要な病気なのだ。
 特に懸念されるのは子どもたちの状況だ。厚生労働省研究班の調査で、病的なインターネット依存が疑われる中高生が5年間でほぼ倍増し、全国で93万人に上るとの推計が出された。
 そうした子どもたちは実生活の人間関係を煩わしく感じたり、日常生活に弊害が生じていてもやめられなくなったりする。無理に取り上げようとすると暴力を振るうこともあり、不登校や引きこもりの原因にもなるという。
 スマートフォンを使用する小学生や幼児が増え、ネット依存はより低年齢化していると見るべきだろう。
 ゲーム障害やネット依存の全容把握に向けた早急な実態調査が必要だ。そして、その結果を基にした教育や啓発、相談体制や医療の充実が求められる。
 国内の業界4団体はゲーム依存に関する調査研究に乗り出す。ゲームメーカーはこれまでも親が子どものゲーム時間などを管理できる機能などを提供してきたが、対応を進め、未成年者や依存が疑われる人は長時間ゲームにアクセスできないような制限措置も検討すべきだ。
 子どもたちにとって、いまやネットへのアクセスを完全に断つことは難しい。ネットやゲームとどう距離を取り、利用するか。家庭で話し合うと同時に、子どもが自主的に考えるよう促したい。