<社説>政府が偽情報対策 まず官製フェイク一掃を

 総務省の有識者会議が、事実と異なる情報が流れる「フェイク(偽)ニュース」対策の検討を始めた。

 選挙や災害時のデマ拡散抑止に向けて本格的な対策をまとめるためだ。政府は、会員制交流サイト(SNS)を手掛けるフェイスブックやツイッターなど巨大な米IT企業や情報配信事業者に自主的な行動規範の策定を求めることを視野に入れている。
 政府がデマ拡散抑止対策に乗り出す背景には、偽情報の影響を受けた人々の投票が選挙結果を左右しかねないとの危機感があるという。民主主義の根幹を揺るがす事態を避けることが表向きの理由だ。
 しかし政府主導で対策を進めることはむしろ危険だ。何が偽情報に当たるかを判断するのは政府だからだ。政府にとって都合の悪い情報を標的にして事実や言論を封じ込める恐れがある。
 2016年の米大統領選では、トランプ氏に有利になるような偽の記事が出回ったとされ、大問題になった。そのトランプ氏は自身に不都合なニュースを「フェイク」と決めつけ、メディアに圧力をかけている。政府のデマ対策は同様に悪用されないか。
 政府は憲法で保障された「表現の自由」に配慮し、法制化は見送るという。しかし政府主導で対策を進めることは事実上、政府の裁量を基にした言論介入だ。表現の自由が侵害される可能性は極めて大きく、政権批判や腐敗の追及まで封じられかねない。言論統制に突き進む恐れがある。
 偽情報対策は、あくまで民間の努力で情報を見極め判断し、デマや誤情報を減らしていくべきだ。政府が対策に介入すべきではない。
 そもそも安倍政権に対策を進める資格はない。自らフェイクニュースを流してきた経緯があるからだ。名護市辺野古の新基地建設に伴う埋め立てについて「土砂投入に当たって、あそこにサンゴは移している」と、事実と異なる発言をした。実際は土砂が投入されている区域でサンゴの移植は行われていなかった。
 米軍普天間飛行場の5年以内の運用停止についても首相は「最大限努力する」と約束したが、実現の見通しのない空手形だった。
 首相に限らない。沖縄の基地問題に関して政権幹部からは偽情報と取れる間違った情報や誤解を与えかねない発言が繰り返されてきた。菅義偉官房長官は昨年の国会で、普天間飛行場返還合意のきっかけを、少女乱暴事件ではなく「事故」と強弁し続け、修正しなかった。
 このような政権にデマ対策の手綱を持たせてはいけない。とはいえ、ネット上では偽情報があふれ、選挙や災害時に深刻な影響を与えていることも事実だ。民間の努力を促す以外に政府がやるべきことは、襟を正して政府自身がフェイクニュースを発信しない仕組みをつくることだ。それこそが政府のデマ対策だ。



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