<社説>未成年者の大麻摘発 薬物根絶へ社会の決意を


社会
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 これほどまで簡単に未成年者が大麻を手に入れることができるのか。青少年を巻き込む違法薬物の蔓延(まんえん)を食い止めるため、沖縄の社会全体の問題として強い決意を持ち、一過性ではない対策を講じなければならない。

 県警は6日、高校生を含む23人の未成年者が関わっていた大麻関連事案6件を発表した。2018年12月から今年5月30日にかけて、沖縄本島内で大麻を所持したり、譲り渡したりしたとして高校生5人を含む未成年者10人、成人2人の計12人を大麻取締法違反容疑で摘発している。
 人数の多さに愕然(がくぜん)となるが、高校生らが通う学校は複数にまたがり、6件がそれぞれ直接的には関連していない点も深刻だ。若者が興味本位で手を出すことが可能なほど、未成年者の大麻事件が特異な事例ではなくなっているとの認識を持つべきだろう。
 若年層の大麻乱用は全国的に拡大している。国内で大麻事件による14~19歳の人口10万人当たりの摘発者は14年に1・1人だったのが、18年は6倍近い6・0人に悪化した。沖縄では大麻で摘発された少年は15年に5人、16~18年は年間7人で推移し、19年は5月末時点で既に10人だ。
 薬物汚染が低年齢化する背景に、インターネット上の会員制交流サイト(SNS)を介したやり取りがある。今回の事件でも大麻に「野菜」という隠語を用いてネット上で売買していた形跡や、SNSで面識もないまま売買に関わっていた者もいるという。
 匿名性が高く、日々技術が更新されるネットの対策をどう講じるかは課題だ。だが、大麻をはじめ違法薬物を未成年者が手にするには、それを供給する大人や資金源とする組織の介在が必ずある。
 今回の事件で県警は、高校生に大麻を売った人物が反社会的組織に関わっている可能性もあるとみて捜査を続けている。薬物汚染を断つ対策を取るために、まずは流通経路など事件の実態解明を急がなければならない。
 また、ネット上などで大麻は「健康に影響がない」といった誤った認識が広がり、使用に対する心理的な抵抗感をなくすような風潮もある。SNS世代の若者たちがファッション感覚で手を出し、ネットを介して安易に流通させてしまう温床となる。
 大麻を繰り返し使用することで脳の機能障害や無動機症候群、幻覚や幻聴を伴う大麻精神病を引き起こすこともある。発達段階にある青少年の心身や人間形成に及ぼす悪影響について、正しい知識を持たなければならない。
 最初は軽い気持ちで始めても、一線を越えてしまうと密売人から購入するほどに依存が進み、より強い刺激や快楽を求めて覚醒剤などにエスカレートしていくのが薬物の恐ろしさだ。青少年が道を踏み外さないよう、社会が一丸となり違法薬物根絶を誓わなければならない。