<社説>路上寝全国の5倍 過度の飲酒控えることだ


社会
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 酒に酔うなどして道路上に寝てしまい、車にひかれる路上寝の交通事故が後を絶たない。2014~18年の5年間に県内で88件発生した。このうち12件が死亡事故だ。

 全ての交通人身事故に占める路上寝事故の割合は全国水準の5倍近くに上る。急病もあるが大半は過度の飲酒が原因だ。温暖な気候、酒に寛容といわれる地域性が影響しているとみられる。
 一般ドライバーは、道路に寝ている人がいることを常に念頭に置いてハンドルを握っているわけではない。昼間ならまだしも、夜間だと気付くのが遅れて、致命的な事故につながるリスクが高まる。
 路上寝の怖さはいくら強調してもしすぎることがない。生命を危険にさらす行為は一掃しなければならない。
 だが、路上に寝てしまう人は、しらふのときにはそれが危ないことだと分かっていても、多量の飲酒のせいで意識がもうろうとし、判断力を失っていると考えられる。
 悲劇を防ぐには、前後不覚になるまで酒を飲まないことだ。酒席で泥酔した人がいれば、一人で帰すのではなく、タクシーに乗るまで周りの人が見届けるといった配慮が求められる。酒を提供する飲食店側の気配りも大切だ。
 昨年は「道で人が横たわっている」といった路上寝関連の通報が7080件警察に寄せられた。例年、気温が上がる6~9月に突出して通報が多くなるという。地域の催しなど、屋外で酒を飲む機会が増えることが背景にある。
 それ以前に、過剰に飲酒をする習慣がある人が多いことがたびたび指摘されてきた。
 缶ビールなら1、2本程度までというように、口にする酒量を決めて、厳守するのも一法だ。自制心を身に付けることが重要になる。
 交通事故に遭うと、命は助かっても重い後遺症に苦しむケースが少なくない。本人だけでなく、家族まで不幸のどん底に突き落としてしまう。
 路上寝が原因の交通事故によって夫を亡くした女性は本紙の取材に「事故に関係した人全員の生活が狂った。夫は娘の成長を見守れなかった。ひいた人も道路に人が寝ているとは思わなかったはず。路上寝事故は皆が被害者になる」と語っている。悲しみは癒えることがない。
 路上に寝ていると、運転者から見えず、発見が遅れるため、重症化しやすいという。
 誤ってひいてしまった運転者も悲惨な状況に追い込まれる。不可抗力に近い状況だったとしても、大きな過失責任を負わされる。
 ドライバーは日頃から安全な速度で走行することを習慣付けたい。見通しが悪くなる夜間は、特に慎重に運転する必要がある。それによって、万一、路上寝に出くわしたときに、事故を回避できる可能性が大きくなるはずだ。
 夏場は各地で祭りなどの催しがある。節度ある飲酒を心掛けたい。