<社説>大阪の拳銃強奪 検証徹底し再発の防止を


社会
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 交番の警察官が襲われ、拳銃を奪われるという凶悪事件が発生した。警察官の安全を確保し、拳銃が強奪されないためにはどうすればいいのか。事件を徹底して検証し、万全の防止策を講じるべきだ。

 大阪府吹田市の千里山交番で16日、勤務中の警察官が刃物で刺され、拳銃が奪われた。容疑者は丸一日たった17日に逮捕された。
 治安を守る警察官の身の安全が脅かされたのでは、市民は安心して生活できない。
 容疑者の男は拳銃を持ったまま丸一日、地域を徘徊(はいかい)し、地域住民が差し迫った危険にさらされた。不安の中で、一歩も屋外に出られない子どもや買い物を控えた主婦もいる。休業を余儀なくされた飲食店などもあった。市民の心身への負担は計り知れない。
 警察官が拳銃を奪われる事件は立て続けに発生している。2013年以降を見ても大阪や熊本、愛知、神奈川など主な事件だけで8件ある。いずれも通報などで駆け付けた警察官が襲われた。
 18年6月には富山市の交番で警察官が男に刃物で襲われ死亡している。回転式拳銃を奪って逃走し交番から約100メートル先の工事現場で警備に当たっていた警備員に発砲し、死亡させた。男は駆け付けた警察官に逮捕された。
 吹田市の事件では、容疑者が全長約29センチ、刃体の長さ約15センチの包丁で警察官を襲ったことが分かっている。
 鋭利な包丁、ナイフなどを使った重大事件は後を絶たない。人を殺傷する凶器となり得るような刃物が容易に入手できる現状にも問題がある。この際、見直すべきではないか。売買時に購入者の身元を確認するといった、何らかのルールを設けることを検討してもいいだろう。
 大阪府警によれば、容疑者は「私のやったことではありません」などと容疑を否認しているという。また「病気がひどくなったせい、周りの人がひどくなったせい」とも話している。刑事責任能力を含め慎重な捜査も必要だ。
 大阪府警では、昨年8月に富田林署で勾留中の容疑者が逃走する事件が発生している。容疑者の逮捕まで約1カ月半を要した。情報公開が後手に回り、行政機関への防災行政無線の要請も遅れた。その結果として容疑者の長期逃亡を許した不祥事だが、今回は事件発生後から積極的な情報公開を続けた。
 約1時間半後には府警のメール配信サービスで事件発生を伝えた。その後も、事件現場となった交番周辺をうろつき、防犯カメラに映った不審者の画像を公開している。
 速やかな情報公開が有力な容疑者情報や潜伏先などの情報収集に役立ち、逮捕に至った。事件の早期解決につながる一つの教訓としてほしい。
 全国どこで起きてもおかしくない事件である。全容解明を進める中で、あらゆる反省と教訓をくみ取り、再発防止策に生かしていきたい。