<社説>実刑確定者逃走事件 再発許さぬ対策が急務だ

 刑務所に入るのを拒んだ神奈川県の男が丸4日近く逃走した揚げ句、逮捕された。窃盗や傷害の罪などで実刑が確定した後、服役させるため横浜地検が男を収容しようとしたが、包丁を振り回して威嚇し、車で逃走していた。

 検察、警察の不手際が次々と明らかになった大失態である。この間の経過を厳しく検証し、実効性のある再発防止策を講じるべきだ。
 今回の事件のように実刑判決が確定後、刑務所に収容される前に逃げた者は「遁刑(とんけい)者」と呼ばれる。昨年末時点で全国で26人に上るという。
 山下貴司法相は25日の閣議後の会見で「現時点で誰がどのように逃走しているかを明らかにすることについては、さまざまな影響を及ぼすこともある。どうやって公表するかは検討しなければならない」と述べた。
 悠長な印象は否めない。氏名も公表しないで身柄を押さえることができるのか。市民の安全を確保するためには速やかな情報開示が必要なことは明白だ。26人も遁刑者がいる現状にも驚く。迅速な収容のため、あらゆる手だてを尽くしてもらいたい。
 今回の事件では、男が自暴自棄になって二次被害を引き起こす危険もあった。小中学校が休校になったり、外出を控える人が増えたりと市民生活に大きな影響が出た。
 事件を通して浮き彫りになったのは、情報公開が後手に回ったことだ。逃走時の検察から地元自治体への連絡は4時間近くを経過した後だった。一夜明けて男が逃走に使った車が見つかった時も地元自治体には連絡すらなかったという。
 大阪で今月、交番が襲われ、拳銃が奪われた事件が教訓となっていない。大阪府警は事件発生後から逃げた容疑者の情報を積極的に公開し、早期解決につなげた。
 横浜地検、神奈川県警の組織的な初動の遅れも明らかだ。19日午後1時すぎに男が逃走してから緊急配備が実際に敷かれるまでに5時間近くを要した。
 神奈川県で逃走した男は一定の保証金を納付することで、身柄の拘束を解かれる保釈が許可されていた。実刑確定後の収容方法に不備があった。
 収容方法を定めた統一的なマニュアルはなく、各地検の運用に委ねられているという。検察は収容方法の見直しを急ぐべきだ。
 事件を機に逃亡の恐れが過大に評価されるようになり、保釈が認められないケースが増えることが懸念される。だが逃走が検察、警察の失態のせいで起きたことは疑いない。保釈制度に責任転嫁することがあってはならない。
 長期の身柄拘束による「人質司法」と国内外から批判を受けたばかりである。重要な法律上の権利と調和を図り、いかに市民生活の安全を確保するか。知恵を絞らなくてはならない。