<社説>米軍事故対応指針 地位協定の抜本改定迫れ

 提供施設外で起きた事故の現場に立ち入るのに、どうして米国の同意が必要なのか。主権の行使に消極的な政府の姿勢に、落胆を禁じ得ない。

 日米両政府が、基地の外で発生した米軍機事故の現場対応に関する「ガイドライン(指針)」を巡り、日本の警察や消防が現場に速やかに立ち入ることができるよう改定することで合意した。ただし、立ち入りに日米相互の同意が必要なのは従来と変わりない。絶対的な主導権を握っているのは依然として米国だ。
 米国との間で地位協定を結ぶ他国で米軍機事故が起きたときの状況はどうか。県の調査によると、ドイツでは自国が現場の安全を保持し、調査委員会にも入った。イタリアでは現地の検察が証拠品を押収するなど、主体的に捜査している。両国とも、原則として米軍に国内法が適用される。日本では逆に、国内法を適用しないのが原則だ。
 第2次大戦の敗戦国という立場は同じだが、戦後の米国との向き合い方には雲泥の差がある。
 日米地位協定の合意議事録では、米国軍隊の財産の捜索、差し押さえ、検証を行う権利を日本が行使しない旨を定める。捜索などができるのは米国側の同意があったときだけであり、日本側の主体的な捜査など、望むべくもない。
 2017年10月に東村高江の牧草地で起きた米軍CH53ヘリの不時着炎上事故で、日本側が現場に立ち入ることができたのは事故発生から6日もたってからだ。機体はもとより、周辺の土壌まで米軍が持ち去った。捜査当局は手をこまぬいて見ているしかなかった。日本側の反発が強まったことが今回の指針改定の背景にある。
 ガイドラインによると、米軍機による事故が起きたときには二つの規制線が設けられる。一つは事故現場至近の「内周規制線」だ。安全性の観点から立ち入るべきではない距離を判断し決定されるという。もう一つは、見物人の安全や円滑な交通を確保するために設ける「外周規制線」だ。
 河野太郎外相は「内周規制線内への立ち入りが迅速かつ早期に行われることが明確になった」と胸を張るが、あくまでも、日米両国の責任を有する職員の相互の同意が前提になる。実際にはケースバイケースの運用になる可能性が大きく、実効性は不透明だ。
 米国の財産である機体の押収を米側が認めるはずもなく、日本側が捜査を尽くせない状況が大きく改善されるとは思えない。
 事故で有害物質が流出したときの日本側への情報提供が明記されたのは評価できるが、これとて、国民の安全を確保する上で当然の措置だ。この間、手付かずだったのは政府の怠慢にほかならない。
 根本にあるのは不平等な日米地位協定の存在である。政府は、弥縫(びほう)策でお茶を濁すのではなく、米国に対し抜本的な改定を迫るべきだ。