<社説>最低賃金中央審答申 正規雇用の拡大不可欠だ

 2019年度の最低賃金は現在の方式になってから最大の引き上げ幅となり、全国平均で時給900円台に達する見込みだ。政権は「戦後最長の景気拡大」を強調してきたが、生活者に所得増の実感は乏しい。最低賃金の引き上げで労働分配率を高め、暮らしの底上げをさらに進めていく必要がある。

 最低賃金は人を雇う際の一般的な金額ではなく、憲法25条の「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するセーフティーネットだということを認識しなければならない。
 中央最低賃金審議会の目安通りの引き上げ額だと沖縄県の最低賃金は788円となる。788円に引き上げられたとしても、週40時間働いて月の収入は13万円に届かない。年収換算では150万円程度であり、家計を維持できる十分な額ではない。
 これまでにも、最低賃金で働いた場合の収入が生活保護の給付水準を下回る逆転現象が起きるなど「ワーキングプア」を巡る議論があった。働くことで生活保護から脱するという意欲につながり、貧困の連鎖を生み出さない水準まで最低賃金を引き上げていくことが求められる。
 さらに沖縄の最低賃金額は全国平均の901円と差があり、千円に達しようとする東京、神奈川と200円以上の開きがある。
 物価や企業規模の水準が異なり、地方の中小零細企業にやみくもに賃上げを迫れないという事情はあるだろう。だが、住む場所によって国民の生活保障に差が生じることがあってはいけない。同じ労働であれば賃金の良い大都市圏へと人口が流出し、都市と地方の経済力の格差を広げることにもなる。
 1人当たりの県民所得が全国一低い状況からの脱却を目指す沖縄県にとって、最低賃金の地域間格差を埋めることは重要な政策課題だ。
 総務省の就業構造基本調査によると、17年の非正規雇用者の割合は沖縄が43・1%で、47都道府県で最も高い。全国平均は38・2%だ。雇用が不安定で賃金が低い非正規が多い中で、最低賃金は全国で最低の水準に置かれる。県民の所得増には最低賃金の引き上げだけでは足りず、働く人を使い捨てにしない正規雇用の拡大が不可欠だ。
 現状は深刻化する人手不足により最低賃金では人を採用できず、最低賃金以上の条件で募集している実態がある。従業員の待遇改善が経営課題となってきた現下の情勢を生かし、非正規から正社員への転換を官民挙げて後押ししていく必要がある。
 これから中央最低賃金審議会の答申を目安に、沖縄地方最低賃金審議会が10月以降の沖縄県の最低賃金額を決めていく。18年度は中央審議会の目安額にさらに2円を積み上げ、沖縄が鹿児島県を上回って全国最下位を脱する形となった。地方審議会での県内労使の議論を注視したい。