<社説>学生データ無断販売 個人情報提供にルールを

 就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアが、就職活動中の学生が「内定を辞退する確率」を人工知能(AI)で予測し、本人への十分な説明なしに企業に販売していた。

 就活生は知らないうちに個人情報を使われ、辞退率の高低についてレッテルを張られた。リクナビには学生から不安や怒りの声が出ているが、当然だろう。
 問題となったサービスの仕組みは、就活をしている学生一人一人の企業や業界のサイトの閲覧履歴、志望動向などの大量のデータをAIで分析して辞退確率を5段階ではじき出した。学生が複数の業界にわたって閲覧していた場合は閲覧した時間や企業数などのデータも活用して傾向を算出していた。
 内定辞退者が出ると採用計画が狂うという企業の悩みを解決するため、辞退しそうな学生を引き留める材料になるというのが売り物だった。価格は400万~500万円で38社に提供していた。合否判定には使わないとする同意書を取っていたというが、どこまで厳格に運用できていたのかは不明だ。
 リクルートキャリアは当初、学生の同意を取っていると説明していたが、その後の調査で「第三者に情報を提供する」との文言が2019年3月以降、一部で表記されず、7983人の学生から適切な同意を得ていなかったと発表した。事業で取得した情報を第三者に提供する際、本人の事前同意が必要、とする個人情報保護法の規定に違反する恐れがある。
 同社はサービスの廃止を決めたが、それで今回の問題を終わらせることはできない。リクナビは年に学生80万人、企業3万社超が利用する就活プラットフォームだ。学生たちの個人情報がどう取り扱われたのかを検証し、問題点を明らかにしなければ同様の問題は再発する。
 企業側も、学生が就活に不利になりかねないデータを安易に購入したことは問題だ。職業安定法は労働者募集の際に企業が第三者から個人情報を取得することを原則禁止している。昨今の人手不足と学生の「売り手市場」の中で、内定辞退者を出したくないという意識は分かるが、労働者の権利保護の視点が欠けているとしか思えない。
 ビッグデータ時代といわれ、産業界では個人情報などを大量に集め活用するビジネスが注目される。
 しかし、サイトの閲覧や会員制交流サイト(SNS)の投稿といった膨大な情報を分析することで、個人の特性が知らないうちに作り上げられ売買される。個人データの利用停止など歯止めを掛ける法規制は現状ない。
 ビジネスに活用するなら、個人がその利点とデメリットを理解した上で情報提供に同意することが大前提となる。時代の変化を踏まえたルール作りが必要だ。