<社説>終戦74年 惨禍の記憶を継承したい

 終戦から74年を迎えた。戦争の悲劇を改めて心に刻み、不戦の誓いを新たにしたい。惨禍の記憶は決して風化させてはならない。

 日中戦争から敗戦までの日本人の戦没者は310万人に上る。このうち約230万人は軍人・軍属等だ。
 沖縄では、おびただしい数の住民を巻き込んだ地上戦が繰り広げられた。帝国陸海軍作戦計画大綱(1945年1月)は沖縄を皇土防衛の「前縁」と位置付け、敵が上陸した場合、極力敵の出血消耗を図ると明記している。本土を守るための捨て石にされたのである。
 沖縄戦は凄惨を極め、日米合わせて20万人余が命を落とした。一般住民と現地召集などを含めた県人の犠牲者は12万2千人余に達する。住民の死者が際立って多い。
 日本軍は、住民の食料を奪ったり、避難していた壕から追い出したりした。スパイの嫌疑をかけられるなどして虐殺された人も多い。
 沖縄に配備された第32軍の「球軍会報」は、軍人軍属を問わず標準語以外の使用を禁じ、「沖縄語」で談話をする者は間諜(かんちょう)(スパイ)とみなし処分すると記している。
 「軍隊は住民を守らない」という事実は、未曽有の犠牲から得た教訓だ。
 このような惨劇を二度と繰り返してはならない。そのためには、日本がこの先もずっと、平和国家の道を歩み続けることが不可欠だ。
 ところが、近年の状況を見ると、無謀な戦争によって国が滅びかけたことさえ忘れてしまったようにも映る。
 安倍晋三政権は2014年、憲法解釈を変更し集団的自衛権の行使を容認すると閣議決定した。翌15年には自衛隊の海外活動を地球規模に広げる安全保障関連法を成立させている。戦争や紛争に国民を巻き込む危険を増大させる政策だ。
 集団的自衛権の行使は憲法上許されない、というのが一貫した政府の解釈だった。本来、一政権による閣議決定で覆せるほど軽いものではない。安保関連法自体、違憲の疑いが強い。
 安倍首相が意欲を示すのが憲法改正である。自民党は改正の条文イメージとして「自衛隊の明記」「緊急事態対応」など4項目を提示している。自衛隊の明記は、平和憲法の根幹である9条を事実上、死文化させる恐れがある。
 憲法の基本原理である「平和主義」は、多大な犠牲を出した大戦への反省から生まれたものだ。平和主義の精神を具体的に規定した9条を変える必然性は全くない。
 戦争がもたらした不幸を忘れ去ることはできないし、忘れてはならない。同時に、災いをもたらした国の仕組みや手法についても理解を深め、同じ過ちを繰り返さないように、目を光らせる必要がある。
 先の大戦から得られた反省と教訓をいま一度、思い起こしたい。