<社説>SDGsの広がり 身近な行動から始めよう


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 「SDGs(エスディージーズ=持続可能な開発目標)」の認知が県内でも広がってきた。内閣府の「SDGs未来都市」に恩納村が認定され、沖縄銀行の「SDGs宣言」のような動きが企業の間でも始まっている。

 SDGsは2015年の国連サミットで採択された、国際社会が一体で取り組む開発途上国支援の「羅針盤」だ。環境の保全や貧困の撲滅、教育の保障、男女の平等など2030年までに達成する17の大枠の目標と、計169件の具体的目標を示している。
 SDGsの前身に、15年を達成期限とした「国連ミレニアム開発目標(MDGs)」があった。MDGsは極度な飢餓の撲滅や衛生環境の改善で成果を出した一方で、女性や障がい者、高齢者など立場の弱い人を取り残してはいけないという途上国内の格差や人権の問題の解消が課題として残った。
 さらに一部の途上国が急速な発展を遂げてきたことで、地球規模の気候変動や環境汚染が深刻化する問題への対応も迫られている。
 国連人口推計によると現在の世界人口は77億人で、2050年には97億人まで増加すると見込まれている。今まで通りの経済成長を新興国が追い求めていけば、地球がいくつあっても足りない。
 持続可能な世界のため、途上国における数値目標だけでなく、経済成長の恩恵を平等に行き渡らせる責任と行動を先進国にも呼び掛けたのがSDGsだ。
 地球環境と経済成長の両立は再生可能エネルギーの確立など、新たな技術革新が不可欠だ。SDGsはイノベーションを創出する役割として民間企業との連携も重視する。
 貧困の解消を誓い、地球上の「誰一人として取り残さない(leave no one behind)」というSDGsの合言葉に、玉城デニー知事が口にするフレーズを想起する県民も多いだろう。県は専門家による万国津梁会議で議論を進め、新たな振興計画にSDGsの理念を盛り込む考えだ。
 復帰後の沖縄は、ダムや道路など産業インフラの整備が進んだが、赤土の海洋流出など、開発と環境のジレンマを抱えてきた。当初は本土との格差の是正が目標だったが、近年は「子どもの貧困」問題に関心が高まるなど、沖縄の内部にある格差へと問題意識が向かっている。
 沖縄の抱える問題の解決に結び付けてSDGsの実践を進めていくことは、有効な取り組みになるはずだ。
 問題が大きすぎると尻込みするかもしれない。だが、SDGsの目標を読むと当たり前の項目ばかりだと感じる。まずは食品廃棄やエネルギー浪費など私たちの日常が世界の直面する問題につながっているという想像力を働かせ、できるところから変えてみる。SDGsの一歩は身近な行動から始まる。