<社説>千葉で長引く停電 復旧にあらゆる手尽くせ


社会
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 台風15号による千葉県を中心とした広域停電は被災から1週間が過ぎても復旧していない。17日午後4時現在6万戸超の停電が続いている。地域によっては水道や通信なども停止したままだ。

 命に関わる問題である。東京電力(東電)、政府、千葉県などの自治体は一刻も早い全面復旧に向け、あらゆる手だてを講じるべきだ。
 9日朝に台風が千葉県を通過し、鉄塔2基が倒れるなど、大きな被害をもたらした。最大約65万戸が停電した。その後の復旧見通しは修正に修正を重ねている。初動段階で根拠が薄弱なまま見通しを立てたのだろう。
 固定電話はもとより携帯電話、インターネットもつながらなかった地域があり、被害の全容を速やかに把握することができなかったと思われる。本来なら、そのような事態に立ち至ったときの対処策を二重、三重に用意しておかなければならなかった。
 東電は、台風通過後の10日夜、翌日の11日朝までに停電戸数を約12万に減らし、11日中には完全復旧を目指すと発表した。ところが、その後は全面復旧を13日以降とし、13日夜になって、さらに27日までかかると再修正している。
 市民の不便、不安は計り知れない。ライフラインがまひすることで刻一刻と、市民は消耗を強いられる。命に関わる危険が差し迫っていることを片時も忘れてはならない。
 特に懸念されるのは、障がい者や高齢者、病人ら災害弱者だ。千葉県によると、停電が続く高齢者施設に入所する女性が12日に熱中症で亡くなった。熱中症が疑われる死者は3人に上る。福祉施設からの救急搬送も多数いるという。
 体の弱った人たちを空調の効かない環境に放置するわけにはいかない。早急に安全な場所へ避難させるべきだ。
 復旧に時間を要する事態を招いたことについて、東電側は13日、経験したことのない規模の倒木や伐木の修復に時間を要し、設備の損壊が多数に上ったことを挙げた。「台風の規模が今まで以上に大きかったことを考慮に入れず、過小な想定をしてしまった」と釈明している。
 「経験したことのない」というのは理由にならない。起こり得る災害への備えを怠った責任は重大だ。
 福島第1原発事故の甚大な被害は、あらゆる災害を想定しなければならないことを浮き彫りにした。その教訓が生かされていない。
 東電側からの要請を受け、沖縄電力も全面復旧に向け、応援要員を派遣している。沖縄での台風災害時に停電復旧に当たってきた知見を千葉で生かしてほしい。
 今月5日、宮古島では台風によって2万戸が停電した。県内でも電線地中化を進めるなど停電が起きないインフラ整備を進める必要がある。停電が発生したときには速やかに復旧できる災害に強いまちをつくらなければならない。