<社説>温暖化若者一斉デモ 気候危機に関心と行動を


社会
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 世界の若者が温暖化対策を訴えて一斉抗議行動を展開した。地球のどこに住んでいようと温暖化と無縁でいられないことを、まず自覚したい。

 米ニューヨークの国連本部で21日、世界各地の若者が集まり、政府や社会に変革を促す「若者気候サミット」が初めて開催され、温暖化の理解促進と対策強化のため政治家や社会への働き掛けを加速させることを確認した。
 若者らは、世界の首脳や閣僚が集まる23日の国連気候行動サミットで議論の結果を伝え、対応を求める。各国の指導者には当然ながら、温暖化の影響を長期間受けることになる若者らの真摯(しんし)な提言に正面から応える責務がある。
 ニューヨークでのこの二つのサミットに向けて20日に、世界の若者たちは温暖化に抗議し、変革を求めるデモ行動を一斉に起こした。欧米各国や東南アジア、中東など150カ国以上で行われた。過去最大規模の数百万人が参加したとみられる。画期的な出来事であり、世界の若者の強い危機感の表れでもあろう。
 世界の平均気温は、18世紀後半から19世紀に起きた産業革命の前と比べ約1度上昇した。今世紀末には産業革命前よりも約3度上がると予測されている。巨大台風や猛暑など温暖化との関連が指摘される現象は既に増えつつあるが、放置すれば異常気象や自然災害が激増しかねない。
 来年に本格始動するパリ協定では、気温上昇を1・5度に抑えることを目指すが、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書によると、上昇を1・5度に抑制できても海面は最大77センチ上がり、洪水の被害者は2倍に増える。猛暑や豪雨の多発で、人の健康や水・食料供給にもリスクが生じる。
 サンゴ礁は70~90%減少するという。沖縄の生態系も破壊され、暮らしや産業・経済が壊滅的打撃を受けかねない。気温は2040年前後に1・5度上昇に至るとの予測もある。さらに気象庁によると日本は世界平均より早いペースで上昇している。
 だが日本では地球温暖化に対する若者たちの関心はあまり高くないようだ。20日の世界一斉行動に参加したのは国内で約5千人だった。
 若者のクールな反応は政治や社会的な課題全般に共通する傾向だが、温暖化への関心の低さは大人たちの責任も大きい。従来の取り組みを反省する必要がある。政治は強いメッセージを発することができず、政府や産業界の対策も後手に回る。石炭火力発電への依存度が高い沖縄としても、議論をもっと深めたい。
 若者サミットで世界の抗議活動の中心的存在であるスウェーデンの少女グレタ・トゥンベリさん(16)は「若者の動きは止められない」と語った。世界の若者の行動に社会が呼応すべき時だ。温暖化対策に後ろ向きな一部リーダーらの怠慢で、未来を危うくするわけにはいかない。