<社説>琉球新報賞7氏贈呈 強固な信念励みにしたい


社会
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 沖縄振興・自治をはじめ各分野に尽力した7氏へ第55回琉球新報賞がきょう贈られる。各分野で「平和で豊かな誇りある沖縄」の実現のため邁進(まいしん)し、その礎づくりに尽力した。 7氏に敬意を表するとともに、それぞれが各分野へ傾注した信念を胸に刻み、沖縄の実りある未来を築く励みとしたい。

 故・翁長雄志氏は「沖縄の心」を胸に地方自治の発展に取り組んだ。名護市辺野古の新基地建設では民意を背景に政府と対峙(たいじ)し、基地負担の軽減を命懸けで訴え続けた。しまくとぅばの復興と継承、空手振興と沖縄アイデンティティーの実現に力を尽くした。
 定時運行の公共交通・モノレールは今や県民生活、経済に欠かせぬインフラだ。沖縄都市モノレールの社長を2011年から15年まで務めた仲吉良次氏は、赤字企業のイメージ払拭(ふっしょく)に奮闘。経営基盤の確立に尽くした。その後も企業経営で手腕を発揮する。
 神戸市内の児童養護施設の子どもたちを無料で沖縄に招くプロジェクト「KOBE夢・未来号・沖縄」。久利計一氏は09年からプロジェクトを始めた。今年で11回目となった。「密度の高い交流をしていきたい」とさらなる交流の進化と深化に知恵を絞る。
 幸喜徳子氏は女性の社会進出を自ら体現し、社会に風穴を開けてきた。旺盛なチャレンジ精神と好奇心が原動力だ。高校教諭に始まり公私で要職を歴任、女性の目線で社会を開拓した。「後輩の女性たちには大きなことを成し遂げてほしい」と思いは熱い。
 文化・芸術功労の安里ヒロ子氏は、琉球古典音楽に欠かせない箏の継承と創作に取り組む。「箏は三線より手数が多く、三線の音がない所にも音色を生み、曲の魅力を引き出す」。伝統を守り継ぐため後進の育成と自らの技芸向上に心血を注ぐ。
 「世界の歌姫」と評された安室奈美恵氏が有終の美を飾って1年が過ぎた。音楽シーンに限らず、ダンス、ファッションにも才能を発揮、時代を席巻した25年間は、まさに「彗星のごとく」だった。その姿は県民に多くの希望と自信を与えた。
 18年間のプロ生活で通算119勝を挙げたのが安仁屋宗八氏だ。うち34勝は巨人から挙げ「巨人キラー」とも呼ばれた。ボールに一球一心の志を込め、「沖縄の星」として県民の期待を背負った。見事に応えた活躍は、多くの後進の自信へとつなげた。
 知事を務めた翁長氏が口ずさんでいた琉歌がある。
 「芯や天冠みてぃ、枝や國廣ぎ、根や地の底に、果てぃん無らむ」
 沖縄を木に見立て、幹は天にも達し、枝は国中に広がり、根は地の底に果てしなく張り巡らされていると、県土の発展を歌った。
 7氏は幹、枝、根を、さらに大木へと育て上げた。その功労を引き継ぎ、さらなる巨木へ育てる誓いを立てたい。