<社説>モノレール延長 混雑緩和に官民で対策を


社会
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 沖縄都市モノレール(ゆいレール)は10月1日、那覇市の首里駅から浦添市のてだこ浦西駅までの4駅、延長区間約4キロで運行を開始する。浦添市、西原町住民の利便性が高まるのはもちろん、那覇市内の渋滞緩和も期待される。てだこ浦西駅に結節するパーク&ライド駐車場を使うことで中北部から那覇へ向かう交通の便が図られる。第2の創業を祝いたい。

 課題は利用者増に伴う混雑の緩和だ。朝の通勤・通学時間帯の定員に対する混雑率は平均120%、最大で160~170%に達する。観光客が大きなスーツケースなどを持ち込むことも多く、混雑の度合いは人数以上になっていると思われる。
 ゆいレールは住民の足としても、観光客を受け入れる基本インフラとしても欠かせないものになった。県や国、関係市町村、モノレール社はゆいレールがより多くの人に利用されるよう、対策を取るべきだ。
 ゆいレールは2003年に那覇空港駅と首里駅を結び開業した。以降、順調に利用客を伸ばしてきたが、県民の利用増に加え、観光客の伸びが予測を上回った。
 今年4~8月の利用者は1日当たり平均5万3791人に上る。開業初年度の3万1905人と比べて約1・7倍に増えた。30年度の需要予測は同7万5千人だ。
 モノレール社は運行間隔を狭める時間帯を広げ、「Suica(スイカ)」など全国共通の交通系ICカードが使えるよう改修するという。ただし、緩和の手段にも限界があり、根本的な解決には車両の増設が必要だ。
 現在の2両編成を3両にするには駅舎の改造など事業費約280億円が必要とされる。モノレール社は当初の設備投資により今年3月末現在、約27億1千万円の債務超過の状態にあり、現状では金融機関からの資金調達ができない。県や沿線自治体の支援がなければ、3両化は難しいだろう。メーカーの都合で22年度までに車両を新造するのは難しいという事情もある。
 一方で、延長による経済効果への期待は大きい。駅周辺にマンションや大型商業施設が進出し、浦添市の基準地価は上昇率が対前年11・9%となった。市は市内3駅を1日当たり1万2千人が利用し、うち2400人は観光客と見込む。
 沖縄県は観光客1200万人を目標に掲げる。人口も30年までは増加を続けると予測されている。需要増は止められない。
 ゆいレールは、戦火で鉄道を失い、米統治下でその復活もかなわなかった沖縄県で唯一整備された鉄軌道だ。戦後、車が主体となった交通体系の中で道路の渋滞が常態化してきた。他都道府県で当たり前に敷設された鉄道の代わりとして、国の責任で沖縄の公共交通の整備をすべきだ。それにはゆいレールも含まれる。