深夜外出禁止令 沖縄を欺く三文芝居だ


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 やはり口先だけの対応、場当たり的な弥縫(びほう)策としか言いようがない。米海軍兵による集団女性暴行致傷事件を受けて、米軍が発令した深夜外出禁止令のことだ。

 日本にいる全米軍人を対象にした異例の措置とはいえ、内実は各兵士が米軍施設内や基地外の住宅内にいるのかを確認するものではない。そもそも基地外に住んでいる米兵はどうやって確かめるのか。
 生ぬるい再発防止策に実効性はない。そんな甘さが結果的に、読谷村での米空軍兵による住居侵入中学生傷害事件を招いたと言わざるを得ない。
 繰り返される米軍関係者による犯罪は、沖縄に対する占領意識が根底にある。小手先の再発防止策ではなく、治外法権を放置している不平等な日米地位協定の抜本的見直しこそ真正面から取り組むべきだ。
 オスプレイ強行配備に反発が高まる中で起きた凶悪事件に、米軍側は3日後、日本にいる全米軍人の深夜外出禁止など再発防止策を打ち出した。日米両政府が迅速さ、異例さを演出して見せたが、とんだ三文芝居だ。
 再発防止策としての深夜外出禁止令は、当初から実効性に疑問があった。これまで何度も発令されながら、米軍犯罪は減らず、県民は裏切られてきたからだ。
 沖縄を除く日本全国に対し、沖縄の信頼を回復すべく日米両政府が尽力しているというポーズを示しているとしか映らない。
 オスプレイ強行配備にも同じことが言える。安全確保策として日米合意した飛行方法は日常的に破られており、それを指摘しても国は「合意内容に沿った訓練を実施している」と繰り返す。
 オスプレイ配備に伴う安全確保策も、米軍犯罪の再発防止策も、沖縄を欺いている。いや、日本国民全体が愚弄(ぐろう)されていると言うべきだ。
 外出禁止令で実効がないのなら、理屈上はもはや昼夜問わず外出禁止にするしかない。しかし、抜本的解決は日米両政府による日米地位協定の改定なくしてはあり得ない。米軍の中にある占領意識が傍若無人の振る舞いを助長しているからだ。
 公務であろうと、公務外であろうと罪を起こせば日本の司法に裁かれる。そういう意識を米軍に植え付けることこそ実効ある再発防止策だ。「基地の島」の戦後の歴史が既に証明している。