小沢氏再び無罪 強制起訴の在り方見直せ


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 陸山会事件で、政治資金規正法違反の罪に問われた「国民の生活が第一」の小沢一郎代表に対し、再び無罪が言い渡された。

 東京地検が2度不起訴とした小沢氏は検察審査会の議決によって強制起訴されたが、東京高裁も「犯罪の証明がない」と判示した。
 東京地検特捜部の元検事が小沢氏の秘書の供述をねつ造した虚偽捜査報告書を作成し、小沢氏が強制起訴されるよりどころとなっていた。
 真に裁かれたのは、取り調べでの誘導や虚偽捜査報告書を作成した検察の捜査手法であろう。行き過ぎた権力行使にあらためて警鐘を鳴らす正当な判決である。
 捜査報告書では、以前の取り調べで小沢氏の関与を認めていた元秘書が再捜査の際、関与を認めた理由を説明して供述を維持していた。しかし、元秘書が隠し録音した音声にはそのようなやりとりはなく、虚偽が明るみに出た。
 検察審査会は証人などの尋問ができるが、実際は捜査のプロである検察側の証拠が影響力を持つ。
 検察が組織ぐるみで、小沢氏を強制起訴に導く不当な誘導をしたことは明らかだ。虚偽捜査報告書をまとめた元検事を不起訴処分にした反省の色が見えない検察当局に猛省を促したい。再捜査を尽くして訴追することが信頼回復への最低限の努めではないか。
 密室で作成された供述調書には、捜査機関の筋書き通りに事実をねじ曲げた記述があることは、相次ぐ冤罪(えんざい)事件で証明されている。刑事裁判も調書より法廷証言の迫真性に重きを置くように変わりつつある。
 捜査機関の取り調べを録音、録画する可視化は絶対に必要だ。可視化が実現しない限り、冤罪が再生産されかねない。
 市民の意見を刑事司法に反映させることを目指し、2009年に導入された新たな検察審査制度で、強制起訴されたのは6件。控訴審判決は今回が初めてだ。他の1件も一審判決は無罪になっている。
 強制起訴により被告人の立場に置かれる人の負担は重い。それだけに、検審も直接関係者を尋問して起訴の可否を探る手だてを尽くすべきだ。
 一方で、不祥事が相次ぐ検察を曇りのない市民の目で監視することも大切だ。強制起訴制度を見直し、より良き形を模索する取り組みが急務だ。強制起訴事例の徹底検証から始めるべきだろう。