解散総選挙へ 国民の閉塞感解消を


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 野田佳彦首相の16日衆院解散の方針表明で、政局は来月の師走総選挙へ向け大きく踏み出した。

 内閣府発表の7~9月期の国内総生産(GDP)速報値が9カ月ぶりにマイナス成長に転じるなど景気後退が鮮明となり、国民に先行き不安感も広がる中で、総選挙実施に疑問がないわけではない。
 しかし選挙による国政の停滞よりも、「ねじれ国会」の下で選挙を先送りした時の政治空白の方が大きいのは誰の目にも明らかだ。
 民主党内では、環太平洋連携協定(TPP)交渉参加を掲げて総選挙に臨む意向の野田首相に対し、TPP慎重派の山田正彦元農相ら十数人が強く抗議している。
 日本社会を激変させるTPPへの懸念や反対論は傾聴に値する。だが今となっては政権転落の恐怖から異を唱える、ご都合主義にも映る。行動があまりに遅すぎた。
 各党もこれまで前回衆院選の公約を真摯(しんし)に実施・総括し、国民に説明責任を果たしてきたとはとても思えない。こうした状況は国民の政治離れに拍車をかけ、政党政治の命取りになりかねない。
 国民の閉塞(へいそく)感を解消するためにも、国政のこれ以上の停滞は許されない。各党は、野田政権が進めてきた社会保障と税の一体改革や脱原発依存、TPP交渉参加など重大な政策課題に対する評価、対案を国民に明確に示すべきだ。
 沖縄への基地過重負担の押し付けは「構造的差別」である。普天間飛行場返還やオスプレイ強行配備など県民の命や人権にかかわる問題とも真剣に向き合ってほしい。
 国民の圧倒的支持を得て政権交代を果たしながら、政権公約違反を繰り返した民主党の責任は重い。消費増税や普天間移設案が国民合意もないまま推進されている現状が物語るように、民主、自民の二大政党と民意の隔たりも大きい。
 2009年8月以来、約3年ぶりとなる次期衆院選は、橋下徹大阪市長率いる日本維新の会、石原慎太郎氏らが立ち上げた太陽の党など「第3極」も加わり、大連立や政界再編含みの政治決戦となる。
 超短期決戦となるが、国民世論を二分する消費増税で正々堂々と国民の審判を仰ぐべきだ。各党は他党をこき下ろすようなネガティブキャンペーンではなく、実現したい国家像や政治・外交、経済、生活それぞれの再生戦略を競い合い、政権担当能力を示すべきだ。