国内景気後退 海外頼みからの脱却急げ


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 7~9月期の国内総生産(GDP)は3四半期(9カ月)ぶりにマイナス成長となり、日本経済の景気後退が鮮明になった。

 本来ならば、補正予算編成など大規模な経済対策が実施されてしかるべきだが、衆院解散・総選挙の確定で、財政措置を伴う対策は新政権に委ねざるを得ない状況だ。
 政治の混迷を嘆いても仕方ないが、これ以上、景気の足を引っ張ってはならない。政府、日銀関係者には現時点で採り得る政策を総動員するなど、景気後退の長期化を防ぐための最善の努力を求めたい。
 7~9月期のGDP速報値は、実質で前期比0・9%減、年率換算で3・5%減。マイナス幅は東日本大震災が発生した2011年1~3月期の2・1%減(年率8・0%減)以来の大きさであり、厳しい数字と深刻に受け止めたい。
 マイナス成長の要因は(1)世界経済の減速(2)エコカー補助金の終了(3)日中関係の悪化―が指摘される。輸出の落ち込みに加え、個人消費など国内需要も減退する悪循環に陥った構図であり、政治の不作為に起因する日中摩擦が追い打ちをかけた格好だ。
 いずれも一時的な要因との見方がある。しかし、長引く円高に加え、外需の停滞が輸出企業を疲弊させ、国内の雇用を脅かしつつある実態を見過ごしてはならない。9月の有効求人倍率(季節調整値)は、前月比0・02ポイント低下の0・81倍と3年2カ月ぶりに悪化した。
 賃金面を含めて雇用環境の悪化が進めば、先行き不透明感と相まって、個人消費など内需の減退が加速する。デフレ脱却を目指す上でも、悪循環を早期に断ち切らなければならない。
 一方、沖縄経済は、堅調な個人消費や入域観光客を背景に回復基調にある。ただ、国内の景気後退が長引くと、観光を中心に影響が各方面に波及するなど失速は避けられず、先行きは楽観できない。
 専門家の間では、海外経済の回復を背景に、年明けにもプラス成長に戻り、景気後退は短期間で終わるとの見方もあるが、好転するにしても日本経済が「海外頼み」で不安定なことに変わりはない。
 成長力の高い企業の発掘・育成を図ると同時に、優遇税制や金融・規制緩和による事業環境の整備など外需頼みから脱却する対策が不可欠だ。中長期的な成長戦略構築に向け、官民の総力を結集したい。