中国新体制発足 山積する課題に指導力を


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 中国共産党は胡錦濤国家主席の後継者となる新総書記に習近平国家副主席を選出し、新たな指導部体制をスタートさせた。

 新指導部は人口13億人を超す国民を率いるだけでなく、世界第2位の経済大国をかじ取りする国際的な責任や役割も重大だ。国内外の厳しい情勢に的確に対処し、平和と発展に尽くしてほしい。
 習氏は軍トップの党中央軍事委員会主席にも就任した。同ポストは来春国家主席を退任する胡氏が続投するとの見方もあっただけに、習氏は党と軍を掌握して新指導部を発足させることに成功した形だ。
 習氏は妻が人民解放軍所属の歌手であることなどから、軍からも強い支持を得る強硬派のイメージがある。一方で、父親の故習仲勲元副首相が改革派の胡耀邦元総書記に近かったことから、政治改革を推進するとの期待もある。
 9人から7人に減員された最高指導部の政治局常務委員は、保守派・対日強硬派で知られる江沢民前国家主席派が過半数を占めた。改革派には落胆と不満が残る人事だ。尖閣諸島問題でも対日強硬路線が続くとの見方が強い。
 ただ、習氏は福建省長時代の2001年に来県するなど、沖縄と福建省の交流にも貢献した実績を持つ。尖閣問題の建設的な解決、日中関係の立て直しに、習氏と沖縄とのつながりが役に立つ場面があることを期待したい。
 新指導部は当面、大国主義路線と引き締め政策を維持するだろうが、それでは山積する内外の課題に対処できないということを、この機会に再認識すべきだ。
 所得倍増を進める一方で、貧富の格差や環境汚染、汚職の蔓延(まんえん)などの課題を解決することは特に重要だ。生活向上と情報化社会の進展を背景にした、国民の権利意識の高まりや民主化要求にも真剣に応えていく必要がある。
 チベット自治区や新疆ウイグル自治区に対する弾圧、民主化・人権活動家の封じ込め、軍事力増強など、国際社会が厳しい目を向ける問題も残る。こうした中で打ち出された「海洋強国」の推進にも、周辺諸国は警戒感を強めている。
 国際社会は中国に対して、世界の市場として期待する半面、懸念や不透明感も抱いている。習氏をはじめ新指導部は国際協調の重要性を肝に銘じながら、中国新時代へ指導力を発揮してほしい。