2FTA交渉開始 国内の環境整備も急務だ


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 域内の人口約34億人、国内総生産(GDP)19兆ドルという世界最大規模の経済連携が、いよいよ実現に向けた詰めの交渉に入る。

 日本や東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国、韓国、インドなど計16カ国の首脳は20日、アジア広域自由貿易協定(FTA)の2013年早期の交渉開始を宣言した。15年末までに完成させる方針だ。
 協定が締結されれば、アジア地域の貿易、投資のさらなる拡大、さらには世界経済の発展にも弾みが付く可能性がある。交渉開始を歓迎したい。
 ただ、交渉はこれからが正念場だ。日本とオーストラリアの2国間の経済連携協定では、農業分野での折り合いがついていない。さらに、参加国間には経済格差がある。状況を踏まえて関税撤廃などで一定の配慮がなされるようだが、多国間の利害調整は一筋縄ではいかない。
 協議を主導してきた日本は、さらなる主導権の発揮と調整力が求められる。協定交渉と並行して農業の国際競争力強化など国内の環境整備も急務だ。粘り強い交渉で各国と共にメリットを享受できる盤石の協定を作り上げてほしい。
 日本と中国、韓国は、自由貿易協定(FTA)締結に向けた交渉に入ることで合意した。尖閣諸島や竹島をめぐる日本と中国、韓国の対立が深まったが、政治状況と切り離して経済強化を優先した。賢明な判断だろう。
 実現すれば世界の国内総生産と物品貿易(金額ベース)で約2割を占める一大貿易圏が誕生する。アジアの中核をなす3国の経済連携は、アジア広域FTAをもけん引する力となろう。経済連携が相互理解を後押しし、国境を越えた人・モノの交流が友好の機運を高め、歴史問題や領土問題の解決にもつながることを期待したい。
 野田佳彦首相は、両FTAとともに環太平洋連携協定(TPP)の交渉へも参加の意欲を示している。これを衆院選の争点にして、民主党の危機を乗り切りたいとの意向だろう。
 気掛かりなのは、両FTA、TPPが日本経済や国民生活にどのような影響があるか、政府の国民への説明が不十分な点だ。国民的論議も深まっていない。
 いずれも日本の将来を大きく左右する国際協定であり、拙速は許されない。まずは国民に選択の材料を全て提示することが先決だ。