小沢氏無罪確定 検察制度の抜本見直しを


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 政治資金規正法違反の罪で検察審査会から強制起訴され、1、2審とも無罪が言い渡された「国民の生活が第一」の小沢一郎代表の判決について、検察官役の指定弁護士が上告を断念し、無罪が確定した。結果的に検察審査会の強制起訴に大きな疑問を残す形となった。指定弁護士も一審無罪後の控訴が妥当だったか厳しく問われるべきだろう。

 強制起訴の根拠となった検察官による捜査報告書は重要な供述内容が「ねつ造」だった。検察当局は事実ではない供述を基に強制起訴から1年9カ月も小沢氏を被告の立場に置き続けたことについて、検察審査会の運用の妥当性を含めて徹底的に検証すべきだ。
 小沢氏の資金管理団体「陸山会」をめぐる収支報告書虚偽記入事件は元秘書3人が1審有罪となったが、秘書の供述調書が検察事務官不在で作成されたとして証拠申請が撤回され、証拠請求した別の調書の一部も不採用となっている。
 捜査報告書の「ねつ造」以外にも検察の捜査のずさんさが法廷で次々と明らかになっていた。小沢氏が不起訴となったのも捜査の不備が原因なのは明らかだ。検察の恣意的な判断で被疑者が免罪されるのを防ぐ役割が検察審査会にはあるが、今回の事件はこれと真逆で一歩間違えばえん罪を生むところだった。
 検察官役の指定弁護士は上告断念の会見で検察から引き継いだ証拠について「大きく取り扱われている事件の割には少ないと思った」と述べ、証拠が不十分だったことを認める。それなのに、なぜ控訴に踏み切ったのか。
 強制起訴制度を定めた改正検察審査会法は指定弁護士の業務について控訴や上告の具体的な規定がなく、指定弁護士の判断に委ねられている。制度としての不備は明らかで、検証の上、改善が必要だ。
 同事件をめぐる報道は小沢氏の説明責任や政治責任を厳しく指摘する論評が目立った。2審の無罪判決後も一部の報道、論説は検察捜査の問題の指摘ではなく、小沢氏が収支報告書に目を通していないことや証人喚問に応じていない姿勢の批判に終始した。検察捜査を十分チェックできなかった批判力の弱さを各報道機関も反省しなければならない。
 今回の事件を機に、検察は取り調べ可視化など捜査の透明性向上や検察審査会の見直しなど抜本的改革に取り組むべきだ。