米軍民間地巡回 「特権」解消に踏み出せ


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 その場しのぎのパフォーマンスであり、本質的な問題解決には遠く及ばないと指摘せざるを得ない。

 後を絶たない米兵事件を受けて在沖米4軍は、夜間外出禁止令が守られているかを確認するため、那覇市内での夜間パトロールを始めた。
 米軍は嘉手納基地に近い沖縄市や北谷町では既にパトロールを実施していたが、那覇市内で事件が発生したことを受け、範囲を拡大。4人1組で計3組が午後10時から翌日午前5時半まで私服で巡回するという。
 米軍は、外出禁止令のチェック体制の強化を日本側にアピールする狙いがあるとみられるが、しょせんは批判をかわすための弥縫(びほう)策でしかないだろう。
 なぜならば、基地を出入りする米兵を点呼することもなく、そもそも基地外に居住する米兵はチェックのしようもない。つまるところ米軍は禁止令違反を確認するすべを持たず、再発防止に尽力しているとの姿勢を示す夜間巡回が関の山なのだろう。
 裏返せば、再発防止策を外出禁止令に頼らざるを得ない、日米両政府の限界を露呈しているとも言える。
 もとより民間地での米軍巡回には問題も潜む。仮に夜間巡回中に米兵犯罪に遭遇した場合、日本の警察権が円滑に行使できるのか、疑念を抱かざるを得ない。日米地位協定を逸脱し警察権が侵害されることは断じてあってはならない。
 よくよく考えてみると、夜間外出禁止令は、内戦やクーデターなど国情が不安定な地域で、住民の生命と財産を守るため、非常事態宣言などとともに発せられる異例な措置だ。
 悪質な米兵事件が繰り返されるたびに、夜間外出禁止令が発動される沖縄の現状は、非常事態が常態化しているというほかなく、極めて異常というしかない。
 日本の安全を守るはずの米軍が、県民の生命と安全を脅かしている。本末転倒も極まれるとはこのことだ。
 私たちは繰り返し主張しているが、過重な基地負担を解消し、米軍や米兵の特権を保障する日米地位協定を抜本的に見直すことが、米兵犯罪を抑止する最大の再発防止策となる。
 日米両政府は「非常事態」から目をそらすのではなく、米軍、米兵の「特権」扱いにこそメスを入れるべきだ。