原油流出事故 情報開示と補償に万全を


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 事故発生から2週間。この間会社側が異臭に苦しむ住民の声をどのように受け止めていたのか。対応の遅さは批判を免れまい。

 うるま市与那城平安座で発生した原油流出事故について、沖縄ターミナル(三溝芳春社長)は21日、ようやく平安座区民を対象にした説明会を開いた。
 事故発生直後から周辺には強烈な異臭が漂い、住民の中には医療機関を受診した者もいる。区民からは同社への不満や怒りが噴出したという。
 当然だ。事態の重大さからすれば、住民説明会は事故直後に最優先で行われるべきだった。危機管理の意識が欠如していたと言わざるを得ない。
 事故は7日に発生した。同社によると、同日午後2時50分に職員が油漏れを感知。同社の18基あるタンクのうち、1基の浮屋根が傾き、原油が排水路を通ってタンク外へ流出した。消防に通報したのは感知から約20分後だった。
 ただ、職員が感知する1時間ほど前から平安座自治会には異臭がするとの問い合わせが相次いでいたという。果たして油漏れの発生を迅速に覚知できていたのだろうか。タンクの監視体制が十分だったか疑問が残る。
 詳しい事故原因がまだ究明されていないのも気に掛かる。それまで安定していた浮屋根がなぜ傾いたのか。施設内には他に17基のタンクがある。原因が究明されない限り、同様の事故が起きる可能性は捨てきれない。1日も早く原因をはっきりさせ、全タンクの安全性を確立してほしい。
 怖いのはガスが引火して火災が発生することだ。石油備蓄基地での火災となれば、人命にもかかわる大災害となりかねない。タンクへの二酸化炭素の注入など、火災防止対策に万全を期すとともに、作業の進行状況を逐一住民に説明していくことが最も重要だ。
 三溝社長は、説明会の開催が遅れたことに「(同社設立から)40年間の甘えが出た。深く反省し、おわびする」と陳謝した。そうであるならば、異臭による健康被害で医療機関を受診した人への補償など、住民に対して誠意を見せることだ。
 事故後の広報の在り方にも、説明責任を果たしていないとの批判がある。安全管理がどうなっていたかなど疑問点は多い。徹底した情報開示なくして、住民の信頼回復はないと肝に銘じてほしい。