自民選挙公約 あいまいさは許されない


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 美しい言葉を多用しながらその実、肝心な点はぼかしたまま。鮮明な要素もあるが、あいまいさも数多く残す。そんな印象は否めない。自民党の政権公約のことだ。
 安倍晋三総裁は「できることしか書かない」と胸を張ったが、それが「できないことはあいまいに書く」という意味なら、政治不信を助長することになる。大きな課題の処方箋を具体的に示し、有権者の審判を仰いでもらいたい。

 あいまいな言い回しの筆頭は基地政策だ。普天間飛行場移設問題をどうするか一行の言及もない。
 あるのは「抑止力の維持・強化を図る(中略)沖縄をはじめとする地元の声に耳を傾け(同)在日米軍再編を着実に進める」という言葉だけだ。これは従来の政府の言明と寸分も違わない。沖縄の声は「耳を傾け」るだけ、県内移設は強行するという意味だろう。
 それなら「県内移設強行」を明言すべきだ。選挙の間だけぼかすのは詐術に等しい。違うと言うなら、県外移設、あるいは国外移設などと具体的に示すべきだ。
 もはや完全に行き詰まった在沖米軍基地問題への処方箋は、対米従属の政治姿勢、外国軍駐留の在り方再考以外あるまい。その点に言及せず「日米同盟強化」を言い募るのは、構造的な沖縄差別を続けるという意味にほかならない。
 あいまいなのは原発政策にも言える。「全原発の再稼働の可否は3年以内に結論」というのは先送りそのものだ。地震列島に54基もの原発を設置してきたのは自民党政権だから、そうした過去の政策を自己批判しない限り、原発推進の立場であろう。選挙の間だけ明示を避けるのは無責任だ。
 半面、歯切れのいいのは保守色を打ち出した部分だ。その分、右傾化に走る危うさをはらむ。
 自衛隊を国防軍とする憲法改正を打ち出し、改憲要件も緩和する。「国を愛するための教科書」へ、教科書検定見直しもうたう。
 尖閣は「公務員の常駐」を掲げる。「漁業環境整備」にも言及するから、何らかの施設建設も視野にあるようだ。実際に強行すれば、中国との武力衝突の危険性はにわかに高まる。
 公共事業の集中投資や防衛費増額もうたうが、財源は明示していない。公約違反だらけの民主党政権の無責任ぶりを指摘するなら、自民も財源を明示した実行可能で明確な政策を示してもらいたい。