ガザ停戦合意 永続的な和平実現を


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 イスラエルとパレスチナのイスラム原理主義組織ハマスが停戦に合意し、ガザ地区の危機的状況がひとまず沈静化した。14日に始まったイスラエルのガザ攻撃では8日間でイスラエル側6人、パレスチナ側160人超の死者が出ている。停戦によって地上侵攻は見送られ、犠牲者急増という泥沼を回避できたことは歓迎したい。

 双方の停戦は過去になし崩し的に破られてきたため安心はできない。今回の停戦が長期的に維持できるかの見通しは立たないが、この機会に恒久的な和平合意に向けた道筋をはっきりさせるべきだ。
 イスラエル側は停戦発効から48時間以内に自国へのロケット弾攻撃が完全停止すれば停戦が本格的に発効したとみなすとの方針を示していた。2日経過後も戦闘は起きておらず、合意は機能している。次の段階は5年前から人の移動や物流を厳しく規制しているガザ境界検問所の開放を合意通りに実施し、経済封鎖を解く必要がある。
 懸念材料もある。イスラエルは今回のガザ攻撃でハマス軍事部門トップを暗殺するなど組織弱体化の強硬手段を取っている。ハマスもこれまでロケット攻撃できなかったイスラエルの商都テルアビブやエルサレム郊外に長距離ロケット弾を届かせた。双方の攻撃が激化している側面も忘れてはいけない。
 今回の停戦にいたる過程では異例の動きもあった。ハマスはこれまで軍事、財政的な後ろ盾だったイランとは距離を置き、穏健派ムスリム同胞団を基盤とするエジプトをはじめ、トルコ、サウジアラビアなどスンニ派諸国の「新たな後ろ盾」による仲介に応じた。
 各国は外相がガザ入りしてハマスを後押しした。「アラブの春」後に生まれた、この中東新秩序が今後も和平実現に大きく作用することを期待したい。
 米国も迅速に動いた。1期目では中東政策への努力不足を指摘されたオバマ大統領は今回、クリントン国務長官を中東に急派した。米国は調停を主導したエジプトのモルシ政権に配慮しながら、イスラエルに合意受け入れを説得したとみられている。米国はアジア優先戦略を進めるつもりだというが、今後も中東和平に積極関与を続ける責任がある。
 変容する中東に国際世論は深い関心を寄せ続ける必要がある。そして各国は一時的ではなく永続的な和平実現に協力していくべきだ。