性被害者支援施設 財源確保し全国に設置を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 これで先進国と言えるだろうか。強姦(ごうかん)などの性暴力に遭った被害者が、治療や告訴の手助けを1カ所で受けられる「ワンストップ支援センター」が全国で5都道府県にしか設置されていないことが分かった。沖縄も未設置だ。

 被害者が何ら公的支援を受けず、放置されるのは人道に反する。結果的に憎むべき加害者を野放しにすることにもなりかねない。国は早急に性暴力禁止・被害者支援の基本法をつくって財源を確保し、センターを全都道府県に設置してほしい。
 各政党は総選挙でこの問題も争点の一つに据えるべきだ。選挙後に発足する新政権は、本腰を入れて取り組んでもらいたい。
 性暴力の被害者は心身に深い傷を負うと言われるが、早期に適切なカウンセリングを受ければ心の傷は最小限にできる。緊急避妊薬の処方も必要で、性感染症予防の処置も受けられるようにしたい。告訴に備え証拠の採取も必要だ。
 被害者がこれらの施設を行き来し、何度も事情を説明するのは負担が大きく、1カ所で支援が得られるワンストップ支援センターの必要性はかねて指摘されていた。
 政府は2011年3月決定の第2次犯罪被害者等基本計画で設置促進をうたった。各県に少なくとも1カ所設置することを目指し、内閣府は5月に「開設・運営の手引き」をまとめている。
 だが計画にうたうだけで財源の手当ては皆無だから、設置は遅々として進まない。設置済みの5都道府県でも東京や大阪は民間運営で、公費で運営する愛知や佐賀も財源は厳しく、開設日時が制限されている。
 未設置の県はさらに深刻だ。財源だけでなく人材や医療機関の不足を挙げる声も多い。国が本腰を入れて取り組まなければいつまでも不足のままであろう。
 韓国では全国16カ所の病院にセンターを設置し、事情聴取用の部屋や証拠収集キットも完備、予算の半分は国費でまかなっている。カナダや米国は24時間で電話相談や病院・警察への付き添い支援がある。日本も立ち遅れた現状を脱すべきだ。
 沖縄では幸い、17年間も精力的に活動してきた強姦救援センター・沖縄(REICO)の大きな実績がある。民間団体の力も活用し、公的支援を強力に進めて、365日・24時間、被害者が安心して駆け込める態勢を整えたい。