県監査委が勧告 「規則逸脱」の指摘重い


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 識名トンネル虚偽契約問題の損害賠償を求める住民監査請求に対し、県監査委員が虚偽契約による国庫補助金返還で生じた利息約7177万円を県による損害と認めた。住民が求めた賠償額の一部認定にとどまったが、県は監査委の結果を重く受け止める必要がある。

 監査委は知事に対して工事に関わった職員と請負業者にあらためて調査し、必要な措置を講じるよう勧告した。県監査委が記録を把握している1984年以降の住民監査請求で勧告の結論が出たのは今回が初めてだ。住民の監査請求で県の責任の一端を明確にした意義は大きい。
 監査委は来年5月末までに必要な措置の実行を求めた上で、ほかの自治体が損害額を関係職員で補てんした事例を挙げ「参考としていただきたい」と記している。事実上、関与した職員らで返済するよう促している。不適正な会計処理によって公金が失われた責任を当事者が負うのは当然だろう。
 監査結果報告書では工事のずさんな管理体制をいくつも指摘している。県土建部工事監督要領で工事の変更、中止の際に義務付けられている契約担当者への報告や承認手続きが何度も履行されていなかった。
 また追加費用の工事契約を議会の議決が必要な本体工事の契約変更とせず、別件の随意契約にしたことについても「議会の議決を避けるためにとられた措置であると認識せざるをえない」と指摘し、議会承認を意図的に回避したと認定した。ここまで規則を逸脱しても工事が実行できると考えた県側は、猛省すべきだろう。
 4請求のうち2件は受理後に却下し、1件は請求人の主張に理由がないとして棄却した。2件の却下理由は支出から1年と規定した請求期間を過ぎていることなどを挙げている。住民が行為自体を知り得ない場合は支出から1年を過ぎても「正当な理由」として請求が認められる。監査委は最高裁判決の判例を根拠に、問題を知る契機となった新聞報道から6カ月以内に請求していない点を理由として却下した。
 地方自治法と判例を根拠にした監査委の判断は納得せざるを得ない半面、そもそも問題発生から1年という期限が妥当か疑問も残る。あまりにも短く、これでは行政の不作為を助長する懸念がある。請求期限を延長するなど監査委員制度自体を見直すことも必要だ。