パレスチナ決議 憎しみの連鎖断つ契機に


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 国連総会の本会議が、パレスチナの国連での資格をこれまでの「オブザーバー組織」から「オブザーバー国家」に格上げする決議案を採択した。
 イスラエルの占領下という実態は何も変わらない。しかし、日本をはじめアラブ諸国、フランスなど138カ国が「国」として独立する権利を再確認したことは重く、和平に向けた強い後押しになる。

 中東和平の解決策はお互いを認め合う「2国家共存」しかない。反対したイスラエルや米国はかたくなに決議を拒否するだけではなく、交渉のテーブルに着くべきだ。
 決議案に反対したのは9カ国のみで、41カ国が棄権した。加盟国の半数を大きく上回る国が決議案を支持したのは、イスラエルが占領地で進めている入植活動が、将来のパレスチナ国家の領土を侵していると見ているからだろう。
 イスラエルは決議翌日、報復措置として占領地に計3千戸の入植者住宅建設を決めた。和平に逆行する無責任な決定と言うほかない。国際社会の厳しい認識を、イスラエルは真摯(しんし)に受け止めるべきだ。
 パレスチナ自治区ガザをめぐってはイスラエル、イスラム原理主義組織ハマスの双方による報復攻撃が繰り返されたばかりだ。双方が憎しみ合う負の連鎖を断ち切るため、決議を順守すべきであって無視することは許されない。
 パレスチナ側への注文もある。アッバス・パレスチナ自治政府議長はガザ地区に拠点を置くハマスと対立しており、今回の決議も国際社会の支持を取り付け、対ハマスで有利に立つという狙いが透けて見える。
 パレスチナ内部の対立に終止符を打てないようでは、和平交渉は程遠い。ハマスの暴力放棄が、名実ともに国家となる要件だ。
 和平交渉の道は険しい。成否の鍵は米国が握る。オバマ大統領は2011年5月、中東政策に関して演説し、2国家共存のためイスラエルに占領地からの撤退を求めた。アラブ側に軸足を近づけたようにも見えた。しかし、今回の決議ではイスラエル寄りの姿勢が際立った。
 国際法違反と指摘される占領地への入植活動に対し、イスラエルの同盟国である米国は入植の停止を促すべきだ。2期目に入るオバマ大統領の真価が問われる。歴史的使命感をもって、大胆な和平案を提示してほしい。