衆院選公示/「戦争放棄」かき消すのか 民主主義再生の契機に


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 第46回衆院選が4日公示される。16日の投開票日に向け選挙戦がスタートする。
 戦後67年の日本社会を見渡した時、その大半を政権政党としてリードした自民党、その行き詰まりを突いて2009年から3年余にわたり政権を担当した民主党が果たした役割、責任の大きさを指摘せざるを得ない。

 自民、民主両党は世界第2の経済大国、「平和国家」、格差を広げた「失われた20年」など、自らの功罪を正視し、新しい政治を編み出す気概を示してほしい。政権奪取を狙う各党も、両党への批判にとどまらず、国民に政権担当能力をしっかりアピールすべきだ。

ソフトパワー
 総選挙は政権選択の選挙だ。今回の選挙では、消費税増税や原発政策、TPP(環太平洋連携協定)交渉参加の是非などが主要な争点になる。このほか、震災復興や原発震災への対応、生活保護見直しなど社会保障政策、財政再建、公務員制度改革など多岐にわたるテーマで論戦を展開する。
 有権者は各政党、各立候補者のリップサービスや情緒的な訴えに惑わされることなく、政策や主張の優劣をしっかり見極めたい。
 個別政策への関心とは別に、私たちは「平和憲法」をかなぐり捨てるような極端な政治主張が強まり、戦後民主主義に終止符が打たれるのではないかという一抹の不安も禁じ得ない。
 日本が奇跡的な戦後復興と高度経済成長を成し遂げられたのは、自民党政権が野党と対立と協調を繰り返しながらも「軽武装・経済重視」路線を貫いたこと、憲法9条を大切にして戦争を放棄する「平和国家」として戦後歩んできたことが大きな要因だろう。
 「平和国家・日本」のイメージそのものが、日本のソフトパワーであり、外交カードとしても強みを発揮してきた。これを「専守防衛」「非核三原則」などの国是が下支えし、日本は戦争をしない国、できない国として歩んできた。
 戦後日本をけん引した自民党は、今回の選挙公約で自衛隊を「国防軍」とする憲法改正を真正面から掲げている。国民が支持すれば、憲法が禁じる集団的自衛権行使の扉がこじ開けられる可能性もある。有権者は、その是非で重い選択を迫られる。
 憲法9条の一部改正を含め改憲志向を強める政党が増える一方で、護憲を掲げる政党が少ない。
 「平和国家」の強みを引き続き生かし切れるのか、「戦争をできる国」への一歩を踏み出すのか。
 各党、各候補者は国の根幹に関わる憲法問題について包み隠さず立場を明らかにし、有権者の審判を仰ぐべきだろう。

差別解消を問う
 県民からも、厳しく問いたいことがある。沖縄に米軍基地の過重負担を押し付ける「構造的差別」をどの政党が打ち破ってくれるのか。オール沖縄の民意が反対する米軍普天間飛行場の県内移設やオスプレイ配備に、どの政治家が真剣に向き合ってくれるのか。
 翁長雄志那覇市長が先の朝日新聞とのインタビューで、「利益誘導こそが沖縄保守の役割なのでは」と問われ、きっぱりと答えた。
 「振興策を利益誘導だというなら、お互い覚悟を決めましょうよ。沖縄に経済援助なんかいらない。税制の優遇措置もなくしてください。そのかわり、基地は返してください。国土の0・6%の沖縄で在日米軍基地の74%を引き受ける必要は、さらさらない。いったい沖縄が日本に甘えているんですか。それとも日本が沖縄に甘えているんですか」と。
 保革を問わず県内首長が日米安保政策に異議を唱えている。背後には「差別するな」「植民地扱いするな」と考える県民がごまんといる。各党、本土住民には、この「公憤」が理解できるだろうか。
 各党から「沖縄に民主主義を適用させるために一生懸命汗をかく」という政治家が数多く誕生することを願ってやまない。