トンネル崩落 万全な維持管理講じよ


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 なぜこんな事故が起きてしまったのだろうか。中央自動車道の笹子トンネルの天井板崩落事故だ。人災の可能性が高く、9人もの尊い命が失われた責任は重大だ。

 1977年に開通したこのトンネルは、上部に設置した換気用のダクトを天井板で仕切る構造の「横流換気方式」で、建築時期が古くて距離の長いトンネルに多い。天井板はコンクリート製で、T字鋼を打ち込んだ金具でつり下げられている。惨事はこの天井板が長さ130メートルにわたって崩落して起きた。複数箇所で金具を接続するボルトが抜け落ちていた。
 トンネルを管理する中日本高速道路は老朽化でボルトやコンクリート、その間の接着剤が劣化していた可能性があることを説明している。それでは崩落防止の対策をどれだけ講じてきたのか。
 開通以来、35年にわたって天井部分の大規模な改修工事は一度も実施していない。金具や天井板との接続部分が緩んでいないかを5年に1度点検していたが、金具を止めるボルトを交換した記録もなく、ハンマーなどでたたいて異常を確認する打音検査も実施していなかった。打音の未実施理由については、つり金具の高さが5・3メートルあるため「手が届かなかった」と説明した。あまりにおざなりの対応だったと言わざるを得ない。
 国土交通省は直轄国道の老朽化対策には積極的に取り組んでいる。一方、高速道路の維持管理は高速各社に委ねられ、国は深く関わっていない。高速道路の点検は国交省の技術基準に基づいて業界団体の日本道路協会が定めた指針がある。各社は指針に沿って点検を実施しているが、国交省は高速各社の定期点検の結果を確認してない。これでは事実上、放任状態と言われても仕方ない。
 協会の指針も打音検査を義務付けておらず、補修頻度の定めもない。十分な指針だったか疑問が残る。中日本高速道路は天井板や金具の耐用年数を定めていなかった。事故後に同社は「打音をすべきではなかったか。それが反省点だ」と説明したが、ずさんな管理で命を奪われた人の遺族にどう顔向けできるのか。
 国も業界もこの機会に全国の道路の総点検を急ぐとともに、新たな道路整備に偏重した従来の姿勢を反省し、安全確保の維持管理に重点を置く方向へ基準や施策を見直すべきだろう。