核なき世界へ 保有国が廃絶計画率先を


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 オバマ米大統領が3日、ワシントンの国防大学で「20世紀最悪の兵器である大量破壊兵器によって、21世紀が暗黒の世紀となることは絶対に許されない」と演説し、2期目も「核兵器なき世界」を追求する方針を明確にした。揺るぎない信念をあらためて国際公約したものとして、歓迎したい。

 同じ日、国連総会(193カ国)では、日本が中心になって呼び掛けた核廃絶決議が過去最多の174カ国の賛成で採択された。北朝鮮が唯一反対、中国、キューバ、インドなど13カ国が棄権した。同種決議は19年連続。国際社会が「核廃絶」への決意を再確認した意義を、率直に評価する。
 問題は、これらの「方針」「決議」をいかに実効性のある政策へと深化させていくかだろう。
 オバマ氏は国家安全保障の最優先課題の一つとして核拡散を防ぐ重要性を訴えた。国連決議は北朝鮮による4月の長距離弾道ミサイル発射や核開発への懸念を表明するとともに、「核なき世界」に向け核保有国に核兵器全廃への努力を求め、核拡散防止条約(NPT)体制の重要性を強調した。
 核廃絶の近道がNPTの維持・強化なのは明らかで、いきおいこれを形骸化したり、挑戦したりする行動はどの国にも許されない。
 NPTは米国、ロシア、英国、フランス、中国の5カ国以外の国には、核兵器保有を認めていない。非保有国の不公平感を払拭し「核なき世界」へ進むためにも、5カ国が率先して本気で核廃絶の意思と行動計画を打ち出してほしい。
 日本政府はこれまで、十数カ国が国連に提出した核兵器の非合法化を促す声明案に対し、署名を拒否した経緯がある。米国の「核の傘」の下にいる政策との整合性が取れず核兵器の非人道性を強調する声明に背を向けたが、こうした日本の態度は「核廃絶に関し二重基準だ」とのそしりを免れない。
 NPT体制の維持・強化のためにも、国際社会は核開発を強行する北朝鮮やイランに対し、毅然と自制を促していくべきだ。
 核兵器による威嚇を前提とした「核抑止の世界」から「核なき世界」へどう転換するか。米国による広島、長崎への原爆投下の教訓にも学ばねばならない。市民を無差別に殺りくし、人体や環境をむしばむ核の悲劇などあってはならない。人類の英知が試される。