環太平洋連携協定の略称であるTPPが、賛否が分かれる経済問題に浮上して初めての衆院選を迎えた。交渉参加が有益なのか、地域や国民の暮らしに何をもたらし、何が揺らぐのか、明確な判断材料がなお乏しい感が否めない。
TPPをめぐる主要12政党の見解は反対が6、容認が4、容認と反対に寄りつつも、曖昧な立場を取る政党が2と分かれている。
民主、自民の2大政党内で賛否両論を抱え、分かりにくい主張になっている。
民主党は、野田佳彦首相が総選挙での争点化を鮮明に掲げたはずだった。だが、政権公約では、日中韓自由貿易協定(FTA)などと「同時並行的に進める」と明記しつつ、参加の是非は「政府が判断する」と推進のトーンを落とし、党内の慎重派に配慮した。
農村地帯を基盤とする候補者を多く抱える自民党は、「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り、交渉参加に反対するとしたが、容認派も多いだけに反対姿勢には曖昧さも残る。
TPPは、原則として全ての品目の関税をなくすことを交渉入りの前提としている。
参加すると、輸入品にかかる関税がなくなり、消費者は安価な外国製の品物を買いやすくなる。貿易相手国の関税も撤廃されることから、輸出産業にも優位とされる。
日本はコメやサトウキビなどの主要農産物に高い関税をかけることで保護してきた。農業関係者には、関税撤廃に伴い、外国産の安い農作物が入り込み、国内農業が大打撃を受けるとの懸念が渦巻く。
県内の農業関係者は、TPP参加が基幹作物であるサトウキビ生産を壊滅的な打撃を与えると危惧し、反対姿勢を強めている。
県内4選挙区の17人の主要候補者のうち、4区と比例区選出の、国民新、社民、日本未来、無所属、共産の現職5人全員が反対を表明した。野党の自民4候補も反対し、公明は国内議論が深まる前の交渉参加は拙速だとしている。
民主の2候補は条件付き賛成を掲げ、日本維新は交渉には参加した上で賛否を判断するとしている。
TPP参加の是非の議論には、経済問題につきものの難しさがある。近い将来の私たちの暮らしに影響を与えるだけに、各党と候補者には、有権者の判断材料をデータを交えて緻密かつ分かりやすく示してもらいたい。