東京電力福島第1原発事故後、初の衆院選とあって「原発ゼロ」が重要な争点となっている。
原発・エネルギー政策は、日本の針路を左右する国家戦略である。旧態依然の思考停止や判断の先送りは許されない。民意におもねる聞き心地のよい言葉というだけでは無責任だ。
原発に依存しない社会をどのような手法や道筋で実現するのか。各党には国民の疑問を解きほぐす明確な政策の提示と活発な論戦を求めたい。
主要12政党の原発・エネルギー政策を見ると、民主党や日本未来の党など少なくとも7党が公約に「原発ゼロ」を唱え、慎重な自民党との違いが鮮明になっている。
世論調査で優勢が伝えられる自民は、全ての原発の再稼働について「3年以内に判断」とし、「遅くとも10年以内に電源構成のベストミックス(最適な組み合わせ)を確立」と判断を先送りした。
安倍晋三総裁は公示後の第一声で「安全神話の中で原子力政策を進めてきた自民党にも大きな責任がある」と謝罪したが、具体的な原発政策には触れなかった。「真摯(しんし)に反省する」との言葉が本心ならば、争点化を避けるかのような言動は厳に慎むべきだ。
一方、民主は「2030年代の原発稼働ゼロ」を明記。日本未来は、10年以内に原発利用をやめる「卒原発」が柱で、公明は「可能な限り速やかに原発ゼロ」、みんなの党は「20年代原発ゼロ」、共産、社民は「即時ゼロ」と訴えた。
環境に優しい太陽光や風力など再生可能エネルギーのメリット、デメリットをはじめ、電気料金高騰の懸念など企業や消費者の負担や不安を軽減する施策も併せて実効性のある政策提言を求めたい。
国民新は当面の原子力利用を維持しつつ原発への依存度を減らす方針。日本維新の会は「いつまでに原発ゼロなんて言えるわけがない」(橋下徹代表代行)と他党批判を強めている。
留意したいのは、原発の扱いと電力改革が表裏一体の関係にあることだ。長年にわたる政官業の癒着構造が、閉鎖的な「原子力ムラ」「電力ムラ」を生み、過酷な原発事故を招いたことを各党は忘れてはならない。
電力小売りの全面自由化や、電力会社から送配電部門を切り離す「発送電分離」などにどう取り組むのか。有権者の判断材料を明確に提示してもらいたい。