脱法ハーブと呼ばれる違法ドラッグが県内で若者を中心に広がっていることが浮き彫りになった。違法ドラッグを吸引するなどして健康被害で救急搬送された件数がことし1月から11月までに37件に上った。
大半の27件は10、20代だ。昨年1年間の10件と比較して3倍超と大幅に増加している事態を重く受け止めなければならない。
脱法ハーブは取締法がある麻薬や覚せい剤とは違うが、幻覚や興奮、陶酔などの作用がある薬物だ。乱用すると健康被害を引き起こし、死者も出ている。簡単に入手できる状況を根本的に見直す必要がある。
まん延を助長しているのは法の抜け穴だ。薬事法の指定薬物になれば輸入、製造、販売が禁止されるが、化学物質を混ぜた乾燥ハーブの葉などの中には法規制の及ばないものがあり「合法ハーブ」などと称して公然と販売されている。
指定薬物でなくても店側が吸引目的を前提に販売すれば薬事法違反で摘発できる。しかし店側は法逃れのため、吸引ではなく「お香」などと称し販売しているから取り締まりが難しいのが現状だ。
県薬務疾病対策課によると県内で脱法ハーブを販売する店舗は3月時点で19店と東京都、大阪府、愛知県に続いて4位の多さだ。11月時点で13店に減少したが、うるま市では小学校の裏門近くに店があり、児童6人が店の関係者と思われる人物から声を掛けられるなど、憂慮する事態が起きている。
県内では今年に入って脱法ハーブ吸引者が自動車を運転して起こした交通事故が2件も発生している。いずれも次々と車両にぶつかる重大事故だ。無関係の人が巻き込まれる事故の再発は何としても回避する必要がある。
県、県警は今年に入り、薬事法に基づく店舗の立ち入り検査を29回実施するなどして危険物質を販売しないよう促してきた。県内高校生、大学生などを対象に講演も開催しており、こうした若者に危険性を訴える取り組みも大切だ。
しかし法規制を厳しくすることこそ先決だ。厚生労働省は現在90種類だけの指定薬物を大幅に指定して規制強化する方針を決めた。来年2月にも脱法ハーブに広く使われている合成カンナビノイド類の774種をまとめて「包括指定」に踏み切る。速やかに違反品を摘発できることになり、指定拡大を機に店舗から一掃されることを期待したい。