12衆院選 憲法/戦争の教訓踏まえているか


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 戦後行われた国政選挙で、今衆院選ほど憲法改定が主要争点となった選挙はないのではないか。

 竹島、尖閣諸島の領有権問題などをめぐり、主要各党で集団的自衛権の発動を可能とするための改憲論議が活発化。国内にいつになく不穏な空気が漂い始めている。
 勢いを増す改憲の流れに対し、護憲を掲げる政党の声はかき消されがちだ。「平和憲法」を守り「平和国家」として国際社会の信を得てきた日本は、「戦争可能な国」へと転換していくのか。有権者は重大な選択を迫られている。
 自民党は政権公約に憲法改正を盛り込み、自衛隊を「国防軍」とし、集団的自衛権の発動を可能としている。安倍晋三総裁は、憲法改正による「国防軍」保持に関し、自衛隊を国防軍に位置付ける場合は交戦規定の整備が必要になるとの認識を示した。
 報道各社の世論調査では、自民党が単独過半数をうかがう情勢だ。保守色を前面に打ち出した自民党中心の政権が誕生すれば、改憲の流れはさらに加速しよう。それは憲法の平和主義を変質させずにはおかないだろう。
 石原慎太郎、橋下徹の両氏率いる日本維新の会も、「自主憲法制定」を主張。外交・防衛政策では、集団的自衛権行使を容認し自衛隊の海外派遣時の武器使用基準を緩和するとしている。自民党との連立も取りざたされているが、そうなればタカ派路線が鮮明となる。
 民主党は「積極的に憲法論議を進める」立場だが、明確な方針を示していない。ただ、共同通信の衆院選立候補予定者アンケートでは9条改正派が約25%を占めている。公約発表で野田佳彦首相は「憲法改正は衆院選の争点でない」と述べたが、その姿勢は疑問だ。改正の是非を明確に国民に示すべきだ。
 一方、公明党は、環境権などを追加する「加憲」の立場だ。共産党、社民党は「憲法改悪阻止」を訴えている。
 71年前のきょう、日本軍のハワイ真珠湾攻撃で日米が開戦し、その後沖縄は地獄絵図のような地上戦が繰り広げられた。戦争がもたらした犠牲は、今も多くの国民の記憶に刻まれ、語り継がれてきたはずだ。作家の城山三郎氏は「戦争で得られたものは憲法だけ」と述べたという。不戦を誓った「平和憲法」をどうするのか、国民全体で考える時ではないか。