新政権 原発政策/過去の検証と反省が先だ


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 長年にわたって原発政策を推進してきた自民党が政権を奪還し、民主党政権が決めた脱原発方針の行方が不透明となっている。

 振り返ると、1955年の原子力基本法制定以来、自民党は原発推進の旗振り役を一貫して担い、党と経済産業省、電力業界が「鉄のトライアングル」と称される強固な構造を築き上げた。
 その間、根拠のない安全神話を国民に妄信させ、最悪の事態への備えを怠った結果、過酷な事故を招いたことは周知の事実だろう。自民党が推進した原発政策の積年のツケが噴き出したのが、東京電力福島第1原発事故と言える。
 そうしてみると、自民党が真っ先になすべきことはおのずと明らかだ。過去の原子力政策を真摯(しんし)に反省するとともに、どこに問題があったのか総括することだ。まずは過去の誤りをきちんと検証し、国民に説明責任を果たすのが筋だ。しかしながら、検証結果など何ら提示されていないのが実情だ。
 政権公約で自民党は、原発・エネルギー政策について「再稼働の可否は全原発について3年以内の結論を目指す」「10年以内に持続可能な電源構成のベストミックスを確立する」と議論を先送りした。
 一方で安倍晋三総裁は衆院選を通じ、代替エネルギーの確保が不透明なまま原発ゼロを唱えることについて「無責任」と批判を繰り返した。
 ところが、連立政権を組む方向の公明党は、原発ゼロを目指す立場だ。自民党は政権を担うに当たり、原発政策について公約をなぞるようにあいまいさを残したり、議論を先送りしたりするのは許されないと認識すべきだ。
 ましてや大勝の勢いに任せて原発ゼロ方針をなし崩し的に覆し、旧来の原発維持路線に安易に立ち返ることなど言語道断だ。
 問題山積の原発に固執する理由は何か。使用済み核燃料の最終処分という根本的な問題も解決できないまま原発を維持し続けることは、次世代への危険の先送りにほかならない。原発・エネルギー政策と表裏一体の関係にある電力改革についても、新政権の方針は明確でなく、今後の行方は不透明だ。
 原発事故を体験した今、原発に対する世論の不安感と不信感は根強く、根深い。自民党は責任ある政権党として、国民の率直な疑問に答えることから始めるべきだ。