韓国大統領に朴氏 「貧富格差」是正へ全力を


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 だれもが平等に幸福を手にしたい―。韓国史上初の女性大統領の誕生は、「変革」を求める国民の強い意志の表れなのだろう。

 19日投開票された韓国大統領選は、保守与党セヌリ党の朴槿恵(パククンヘ)候補(60)が、革新系野党、民主統合党の文在寅(ムンジェイン)候補(59)に勝利した。保守政権が維持される。
 選挙で最大の争点となったのは所得格差の是正だ。朴氏は、「国民が幸せになる時代を開く」をスローガンに、経済成長にも配慮しつつ緩やかな財閥規制を進める方針を打ち出し、支持を広げた。
 韓国では、非正規労働者の割合が5割を超え、家計の負債は約940兆ウォンにも膨れ上がっている。自殺率(人口10万人当たりの自殺者数)も日本の1・5倍に達するという。世界に華々しく進出する超優良企業がある一方で、貧困にあえぎながら底辺で暮らす多くの庶民がいる。韓国社会が長年抱えてきた深刻な問題だ。
 朴氏には、富が集中する財閥などの支配構造にメスを入れ、「持てる者と持たざる者」の二極化を解消してほしい。それがひいては国民の購買力を高め、経済活力となって国の発展にもつながる。
 選挙戦では、伝統的な保守層と革新陣営が激突し、韓国社会は二分された。朴氏が掲げる「国民福祉時代」の実現のためにも、国内の融和は不可欠だ。朴氏には批判勢力にも理解を示し、歩み寄っていく努力も求められよう。
 朴氏の父、故朴熙元大統領は、1965年の日韓基本条約締結の主役だった。朴氏自身も日本の政官界に知人が多い。朴氏は「日本の正しい歴史認識を土台に両国関係が未来志向に発展を」などと原則的なことしか言及していないが、こうしたネットワークを生かしながら竹島問題で対立が深まった日韓関係の修復に力を注いでほしい。
 一方で、朴氏は日韓経済連携協定(EPA)の締結には選挙中から意欲を示し、対立があっても経済分野には波及させない姿勢を強調している。冷静かつ現実的な判断だろう。ぜひ経済連携を突破口に、強固な日韓関係を築いてもらいたい。
 日本側も朴新政権と歩調を合わせ、両国の友好発展に力を尽くす必要がある。日本も政権が変わる。自民党の安倍晋三総裁は、憲法改定などいたずらに韓国側を刺激する言動は慎み、アジアの平和と安定に努めるべきだろう。