新政権 社会保障と税/長期的視野で議論尽くせ


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 衆院選で政権公約に「自助」「自立」を盛り込んだ自民党の圧勝で、新政権下では生活保護削減など社会保障は抑制基調となりそうだ。

 民主、自民、公明の3党は社会保障と税の一体改革で合意した。消費増税だけは決まったものの、年金、高齢者医療制度の論議は「社会保障制度改革国民会議」に先送りされた。
 社会保障制度は国民生活の基盤を支える。財政が厳しいからといって拙速に大なたを振るえば、国民の生活は破綻する。国民が安心して生活できる持続可能な制度と財源についての検証を繰り返し、長期的視野で結論を導き出すべきだ。
 生活保護は、2013年度予算で引き下げられる恐れがある。自民党は選挙公約で「10%引き下げ」と明記したが、数字ありきとも映る。現状より1割切り詰めて、憲法の保障する最低限度の生活ができるのか。まずは実態把握が必要だ。
 生活保護受給者数は過去最多を更新し、9月時点で213万人を超えた。戦後の混乱期も200万人超だったが、経済成長で減り続けた。増加に転じたのは1995年からで日本経済の停滞と軌を一にする。
 雇用環境を改善しないまま引き下げだけでは生活保護から抜け出す光明を見いだせず、絶望感だけを募らせる。自立を後押しする就労支援の拡充が先ではないか。
 それが新政権を担う安倍晋三自民党総裁が表看板に掲げる「経済再生」にもかなう。
 社会保障制度の詳細は社会保障制度改革国民会議で検討し、8月には結論を出すが、その前に参院選がある。成果を焦るあまり場当たり的で中途半端な改革は許されない。国民が望んでいるのは、負担と給付のバランスの取れた長期的、安心できる社会保障制度だ。
 自公両党は現行制度の手直しで対応する姿勢だが、詳細は明確ではない。抑制基調を打ち出す自民に対し、連立を組む公明は社会保障重視で存在感を発揮できるか、問われよう。
 消費税は14年4月に8%に引き上げられる。「消費増税」も大きな争点となった衆院選では、自民党は圧勝したものの、得票率で国民の圧倒的支持を得たわけではない。消費税引き上げの是非をはじめ、社会保障制度の議論の過程で国民の声に真摯(しんし)に耳を傾ける謙虚な姿勢を忘れてはならない。