ワンストップ支援 当事者視点で施設設置を


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 性暴力被害者を1カ所で一元的に支援する「ワンストップ支援センター」の設立に向けた動きが活発化している。21日には那覇市内で、自身や家族が性的被害に遭った人や支援者らがシンポジウムを開き、同センターの早期設立と社会的支援の必要性を訴えた。

 これに呼応する形で、仲井真弘多知事も支援センター設立について、2014年度の予定を前倒しして設置したい意向を示した。県民のニーズにぜひ、迅速に対応してほしい。
 ただ、関係者の間には「形ばかりの施設にならないか」「当事者の視点で」といった懸念や要望があることにも留意すべきだ。県は関係者・機関との意見交換や連携を密にして取り組む必要がある。
 支援者らは最低条件として、夜間診察もする産婦人科のある総合病院内に、支援センターを設置することなどを挙げている。そこを拠点に、24時間・365日体制のホットラインを設け、相談から診察、治療、弁護士や精神科医、警察、福祉施設などとの連携までの仕組みづくりを求めている。
 労働環境の厳しさが指摘される医療現場に、さらに負担をかけることにならないか、との懸念もあると聞く。一方で、被害者やその家族に役立ちたいと熱意を示す産科医らも少なくないという。
 こうした懸念を和らげ、熱意を生かすように環境を整えることこそ、行政の役割だ。診察費や治療費の負担、産科医らの手当や運営スタッフの給与など、公的支援が不可欠なのは言うまでもない。
 支援センターは現在、全国に5カ所あるが、内閣府は今年5月に各都道府県に1カ所は設置することを目指し「開設・運営の手引」を公表した。今後国としても、法整備や財源確保を急ぐべきだ。
 現行法の限界を指摘する声も強い。刑法・強姦(ごうかん)罪は被害者が女性に限定され、女性がどれだけ抵抗したかが犯罪要件にされがちだ。しかし実際は、性的被害を受ける男性もいるし、加害者に家族や知人が多い中で抵抗できなかった女性の方が大半を占める。このため、性暴力を包括的に禁止する法律の制定を求める声も、支援センター設立の動きと並行して広がっている。
 充実した支援センターができるか、法整備が進むか、その鍵を握るのは社会の意識の在り方だ。性暴力を決して許さないという思いを共有し、形にしていきたい。