第2次安倍内閣/普天間閉鎖で新合意を 経済、暮らしの再生急げ


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 自民党の安倍晋三総裁が26日、衆参両院で第96代首相に選出され、自民、公明両党の連立による第2次安倍内閣が同日発足した。
 自民党は、衆院選で「デフレ脱却」「日本経済再生」を優先課題に掲げた。これをどう具体化するか。新政権の政策実行力とその有効性を国民と共に注視したい。

 中国、韓国などでは、自民党の「憲法改正」「国防軍創設」の公約に対し「日本の右傾化」との警戒感も強い。安倍氏は東アジアの平和と安定にこそ指導力を発揮し、国際社会の懸念を払拭(ふっしょく)してもらいたい。間違っても軍事優先国家へ舵(かじ)を切ってはならない。

四つのK
 自民、公明両党は連立合意文書で、新政権の最重要課題を景気・経済対策と位置付けた。日本経済の長期低迷、大震災の被災地をはじめ国民の暮らしの疲弊ぶりを考慮すれば、当然の方針だ。
 外交・安全保障政策では「日米同盟の強化」など総論の確認にとどめ、公明党が警戒する集団的自衛権の行使容認に向けた法整備は持ち出さず、自民が譲歩した形だ。
 連立合意は両党の主張の相違点を玉虫色にし、覆い隠した。来年夏の参院選をにらんだ実績づくりを狙うあまり、国民の目を欺くような政権運営は厳に慎むべきだ。
 安倍首相に真っ先に求めたいのは、基地、経済、雇用、暮らしの「四つのK」の立て直しだ。
 安倍氏は衆院選後、政権公約の尖閣諸島への公務員常駐や政府主催の「竹島の日」式典開催を見送る意向を示している。悪化している中国、韓国との関係改善へ向けた現実的な対処として評価したい。
 しかし、沖縄の米軍基地問題では普天間飛行場の「辺野古移設」の日米合意実行を表明するなど、強硬姿勢を崩していない。1996年の返還合意以来、県民の多数が一貫して反対し、今や県内41市町村の全首長が反対する「辺野古移設」に執着することは、民主主義を否定する暴挙だ。
 この16年間の政府の不作為への反省があるのなら、政治主導でオバマ米政権と普天間の県外・国外移設や閉鎖・撤去へ向けた新たな合意をやり直すべきだ。
 一方、自民党は長引くデフレの脱却策として、日銀による大胆な金融緩和、公共事業を推進する。公共事業に充てる建設国債を増発し、発行額の範囲で日銀に市場で国債を買わせる構えを見せている。
 大掛かりな財政出動を伴う公共事業の復活が危機的状況にある財政の規律を破壊しないか懸念する向きも強い。デフレ脱却と財政再建をいかに両立させるか。安倍首相の手腕が厳しく問われよう。

失政の総括を
 日本経済は7~9月期の国内総生産(GDP)が3四半期(9カ月)ぶりにマイナス成長となった。景気後退が鮮明となる中、新政権には政策を総動員した即効性のある経済対策が求められる。
 ただ、数値目標に目を奪われるあまり、生身の人間を切り捨てるような経済政策がこれ以上、まかり通ってはならない。この国は、労働者の4割が非正規雇用という不安定、不平等な社会になってしまった。生活保護受給者数も9月時点で213万人余と過去最多を更新中だ。政権公約に「自助」「自立」を盛り込んだ自民党の新政権は、どのような雇用・生活の再生策を打ち出すのか。
 景気浮揚のためにも「失われた20年」で深刻化した格差社会の是正に正面から取り組むべきだ。換言すれば、安倍首相には20年前にさかのぼる自民党政権の失政も徹底的に検証・総括してもらいたい。
 日本再生のためには、再生可能エネルギー分野など技術革新を誘発する新産業の創出を含め、国際競争力を取り戻す戦略が不可欠だ。
 だが、新政権は国家戦略も経済再生の処方箋も生煮えのままの船出した感を否めない。だからこそ、安倍首相は政策実行の手順を誤ってはならない。「タカ派色」を前面に出すあまり、優先課題を置き去りにしないでもらいたい。