’12回顧 新振計開始/依存克服へ主体性発揮を


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 復帰40年を迎えた2012年は、向こう10年間の沖縄振興の指針となる改正沖縄振興特措法と跡地利用推進特措法の沖縄2法が4月に施行され、県が初めて策定主体となった振興計画「沖縄21世紀ビジョン基本計画」がスタートした。

 従来の国頼み、国任せの振計から脱却し、民間主導による自立型経済の発展に向け、沖縄があるべき将来像を自前で描いた点が大きな特色だ。
 一方で普天間飛行場移設問題やオスプレイ配備などの基地問題にかすみ、沖縄振興に向けた大きな節目でありながら、高揚感に乏しかった面も否めない。
 ただ、新振計策定はゴールではなく出発点にすぎない。復帰後、強まるばかりだった国への依存体質を克服できるかどうかは、国と県をはじめ、われわれ県民の今後の主体的な取り組みにかかっていることを再確認しておきたい。
 改正沖振法の目玉は、従来のひも付き補助金に比べ、沖縄側の使途の自由度が高い沖縄振興一括交付金制度の新設だ。また、進出企業が税制優遇措置などを受けられる特別自由貿易地域を再編、拡充する形で、国際物流拠点産業集積地域も設けられた。
 一括交付金は「沖縄振興に資する」「沖縄の特殊性に起因する」との交付要件を満たす必要があるが、「自由度」が独り歩きし、何にでも使える財源との誤解から市町村側に戸惑いも生じた。一括交付金はいわば“原石”だ。使い勝手がよく真に地域活性化につながる制度となるよう、国、県、市町村の知恵を結集し磨き上げたい。
 一方、跡地法は、米軍返還跡地の円滑的な活用を目指し、土壌汚染など国による原状回復措置の徹底や、地主への給付金制度の拡充などを明記した。制度を有効活用できるよう、政府は一日も早い基地返還に取り組む必要がある。
 長期的な視点で見た場合、経済自立の起爆剤になると期待される出来事も忘れてはならない。9月に開学した沖縄科学技術大学院大学だ。世界18の国と地域からの1期生34人の入学で研究と教育の両輪がそろった。
 世界最高峰の研究開発で優秀な人材や企業を呼び込み、沖縄に多くの先端産業を集積させる発展戦略に期待が高まる。21世紀ビジョンと共通するが、アジアの活力導入や海外諸国との活発な交流により、沖縄の未来を切り開くとの気概を持ち決意を新たにしたい。