安倍新内閣始動 政策の説明責任を果たせ


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 衆院選で安倍晋三自民党総裁が「できることしか書いていない」と胸を張った政権公約は、果たしてどのような形で結実するのか。自民、公明両党連立の第2次安倍内閣が本格始動した。

 安倍首相は就任後の会見で、「デフレ脱却が政権に課せられた使命」と明言。経済・金融運営の司令塔となる「日本経済再生本部」の新設を打ち出した。株価も上昇し、華々しく船出した感はある。
 しかし、衆院選大勝の追い風は、対応を誤ればそれを上回る逆風となることを忘れてはならない。謙虚に国民の声に耳を傾け、政治不信の解消に努めてほしい。
 政権公約で具体的な方針が明記されていなかった原発政策について、茂木敏充経済産業相は、民主党政権の掲げた2030年代に原発稼働をゼロにするとした方針を見直すことを明言した。核燃料サイクル政策も継続する意向だ。
 この表明は拙速かつ不誠実である。茂木氏がまず語るべきは、福島第1原発事故を助長した自民党の原発政策の反省であるべきだ。まさか「フクシマ」の教訓に学ぶことはない、という訳ではあるまい。
 「東日本大震災からの復興加速」は、安倍首相が内閣の基本方針と位置付けたように、待ったなしの課題だ。政府を挙げて迅速で効果的な施策を実施してほしい。
 気になるのは外交・安全保障政策だ。司令塔となる日本版の「国家安全保障会議(NSC)」の創設を打ち出した。第1次安倍内閣がやり残した仕事の復活だが、その主眼が憲法の禁じる集団的自衛権行使についての政府解釈見直しにあるのは明らかだ。
 岸田文雄外相は、米軍普天間飛行場の辺野古移設を表明。日米地位協定は運用改善で問題なしという姿勢だ。これではまるで“先祖返り”内閣だ。再考を求める。
 麻生太郎財務相が国債発行を44兆円以内にする前政権のルールを適用せず12年度補正予算で増発するなど、新閣僚が相次いで政策を転換する方針を示した。民主党の政策をことごとく否定するあまり、旧来の自民党が続けてきた政官財のなれ合い政治に戻ることがあってはならない。国民は常に厳しい視線を向けていることを肝に銘じてほしい。
 原発問題や震災復興、外交などいずれも困難な課題だ。その解決のためにも徹底的な検証と国民への説明を怠ってはならない。